藤井聡太叡王(竜王・王位・王将・棋聖=19)が、タイトル戦初登場となる出口若武六段(27)の挑戦を受ける、将棋の第7期叡王戦5番勝負第1局(主催・不二家、日本将棋連盟、特別協賛・ひふみ、SBI証券、協賛・中部電力、豊田自動織機、豊田通商)が28日、第1局の協賛でもある東京都千代田区「江戸総鎮守 神田明神」で行われた。対局は先手の藤井が午後6時20分、93手で先勝、初防衛と5冠堅持に向けて好スタートを切った。

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出口さんの後手6二銀(62手目)が弱気で、善戦をフイにしてしまいました。「敗着」と言ってもいいかもしれません。あそこで後手7七歩と打って攻め合いに持ち込めば、有望だったかもしれません。多くの棋士はそう指すと思っていたのではないでしょうか? まだ、「家賃が高かった」ですかね。

その後、藤井叡王の側から先手7七香(65手目)と先に打たれました。これが「盤上この一手」とも言うべき、攻防兼備の好手。戦力を補強しただけでなく、後手から後手7七歩と打つ手や、9九の地点にあった馬を後手4四馬と引く手が消えてしまいました。これで藤井ペースになったと言えましょう。

次に71手目の先手2二歩で後手陣を壁金として、「勝った」と思っているはずです。手筋の小技は、藤井叡王が最も得意としている勝ちパターンですので。やはり、タイトル戦初登場の挑戦者に対し、タイトル戦の5番勝負・7番勝負で「7戦全勝」という、修羅場をくぐった強みが発揮されました。

出口さんは第2局、先手番ですし、反撃を期待しましょう。キリスト教徒の私が1982年(昭57)に42歳で名人になった時は、「勇気をもって戦う」「相手の面前で弱気を出すな」という、旧約聖書の言葉を胸に刻んで盤に向かいました。挑戦者にはこの言葉を届けます。