「『チルドレン』は拍手要員だ」。7月15日、今の国会で約2カ月ぶりに行われた高市早苗首相と野党6党首の党首討論を取材していて、かつて聴いたこんなコメントを思い出した。報道でも話題になった、高市首相の委員会室入場時から花道をつくるように集まり、席に座ればちょっと離れた出入り口付近にわんさと陣取った自民党の新人を含む若手議員たちで構成された大応援団。拍手や合いの手が想像以上に大きく、高市首相の答弁のたびに何らかの反応が起きていた。
若手議員(特に新人)が、本会議場で行われる首相の所信表明や施政方針演説で、拍手や声援を送ったりするシーンはこれまでにもたびたび目にしてきた。今回は、これまでとはちょっと違った空気が漂った。およそ拍手が必要? と思うような答弁でも手をたたき、「よし」「そうだ」などの合いの手を入れ、フライング気味の拍手も起きたり。「読み物(資料)を読まれているのは残念。ライブ感あるやりとりを」と、高市首相の答弁姿勢に苦言を呈した中道改革連合の小川淳也代表には、反発のやじが飛び、高市首相が「ご自身もメモを見ている」とツッコミを入れた時の盛り上がりは、言わずもがな。本筋の質疑ではない分、違和感があった。
こうした空気に真っ向反論すればまだ見応えがあったとも思うのだが、この時、「しまった」とでも言うような表情で言い訳をするように言い返す小川氏の様子は、「多勢に無勢」の今の与野党関係を象徴しているようだった。
そんな「後押し」の存在がある中で、高市首相の言葉には時々、強気さが漂った。国民民主党の玉木雄一郎代表から、最近のマーケットの数字をもとにした「骨太ショック」への見解を問われても、「玉木代表と私が目指しているのは、今こそ経済を強くすること。今、成長に向けてエンジンを吹かす時。いっしょにやりましょうよ、今ならできる。今やらないと間に合わない」とまくし立てると、「そうだ!」という応援団の声援と拍手は一層、ボルテージを増した。玉木氏はその後、「気合と根性だけではマーケットは動かない」と、冷静に指摘していたが。
今回の党首討論が行われた衆議院の第1委員会室は、予算委員会などが行われる部屋だが、通常は首相や閣僚が座る席とその後ろの事務方席、委員が座る席や記者などの席が割と詰まった形で配置されている。党首討論時は配置が替わるが、委員会に関連しない人がたくさんとどまればそれだけ密度が増す。議員傍聴用のいすはあるし、普段の委員会質疑でも議員がここに座って後方支援のヤジを飛ばすこともある。この日、玉木氏の質問時にも国民民主の若手が多数訪れていたが、自民党はそれをしのぐ数の議員が、壁のようになっての大応援。衆院選で得られた「数の力」を象徴するようだった。
実際、こうした若手議員の大応援は、衆院選で勝った首相に向けられることが多い。2005年の郵政選挙に勝った小泉純一郎氏、2009年に政権交代を実現した民主党の鳩山由紀夫氏、その民主党から政権を奪った安倍晋三氏にも、本会議場での若手議員の大拍手や声援が寄せられた。冒頭のコメントは、郵政選挙を圧勝した小泉氏が選挙後初の所信表明演説を行った際の「小泉チルドレン」による拍手喝采大声援に、当時民主党代表だった前原誠司議員(現・日本維新の会)が指摘したもの。新人議員の応援に関しては、党幹部が拍手ややじを飛ばすタイミングまで指南していたと聴いたことがあるが、かつての国会を知る関係者に話を聴くと、「今回の党首討論の『高市応援団』のようなものはあまり見たことがない」とした上で、「ああいう存在があるのなら、高市首相ももっと国会に出てきたり、党首討論にも応じたりという機会が増えるんじゃないか?」と、皮肉交じりに語っておられた。
本来、17日で終わりだったはずの特別国会は、高市首相の答弁内容や、与党の強引な法案審議に野党が反発し、会期末直前に不正常化。それでも首相こだわりの法案成立が優先され、内閣提出の一部法案が本来の会期末までに成立しない、「あってはならない」(野党関係者)事態となり、25日まで8日間の延長に。高市首相が日本維新の会と約束した副首都法案を通すための延長だと憤る野党幹部もいるが、自民と維新で過半数を持たない参議院での審議の行方は、まだ不透明なところもあるという。
高市首相は「国会に呼ばれれば来て、誠実に答弁している」などと繰り返しているが、最後までなかなか決まらなかった衆院予算委員の集中審議が、会期末前日の24日にセットされた。数の力を手にして、時に強引な手法も指摘された高市首相と、多党化でより弱小化が進んだ野党の、今国会最後の「対決」の場。党首同士の真剣勝負でも、長くても十数分の時間制限で消化不良ばかりだった党首討論と違い、質問者に一定の時間が確保されるのが予算委員会の質疑だ。いろんなことがあり過ぎた今年前半の国会。「最後の見せ場」はどんな展開になるのだろうか。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)


