将棋の最年少5冠、藤井聡太棋聖(竜王・王位・叡王・王将=19)が永瀬拓矢王座(29)の挑戦を受ける、第93期ヒューリック杯棋聖戦5番勝負第1局が3日、兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」で行われ、午後5時38分、53手目に再び千日手が成立した。

第1局では午後4時17分に同一局面が4回繰り返される千日手が成立し、無勝負となった。午後4時47分、先手後手を入れ替え、指し直し局が再開されたが、戦型は角換わりで序盤戦に進む中、再び千日手が成立。タイトル戦では1日に2回、千日手が成立するのは、02年の第15期竜王戦、羽生善治竜王(当時)-阿部隆七段(当時)戦以来。白熱の大一番は異例の展開となっている。

30分の休憩を挟み、先手後手を入れ替え、指し直し局が再開される。3日夜には決着する見込み。

◆千日手(せんにちて) 両対局者がほかの手を指すという考えがなく、同じ手順を繰り返すこと。同一局面が4回現れると成立し、その勝負は無かったこととなり、先手後手を入れ替えての指し直しとなる。

千日手自体、珍しいのだが、「ダブル千日手」となると、きわめてまれだ。過去のタイトル戦で1回の対局につき2回も千日手が出た例は、棋聖戦と竜王戦である。

棋聖戦は、1994年(平6)1月7日の第63期5番勝負第3局、羽生善治棋聖対谷川浩司王将戦。10日後に改めて行った指し直し局は、谷川が制した。

直近で発生したのは、02年の第15期竜王戦7番勝負第1局、羽生竜王対阿部隆七段戦(肩書、段位はいずれも当時)。10月23日午前9時からの2日制で始まった対局は、24日午後4時48分に千日手が成立。指し直し局も同日午後9時51分に成立したが、再度の指し直し局は行わず、11月6日に改めて指し直して、羽生が勝っている。