2月に89歳で亡くなった元東京都知事で作家の石原慎太郎さんのお別れ会が9日、都内のホテルで行われた。岸田文雄首相をはじめ、政財界や文壇など各界の関係者が参列。発起人は安倍晋三元首相らが務めた。関係者によると、会場には一般の参列者を含め約5000人が訪れ、別れをしのんだ。

参列者代表の岸田氏は弔辞で「歯に衣(きぬ)着せぬ物言い、信念を貫くための果断な行動と相まって、強烈な個性に強くひかれた」と述べた。その上で「石原先生が愛したこの日本をさらに次の世代に引き継ぐために、全力を尽くす覚悟です」と力を込めた。

プロ野球ソフトバンクの王貞治球団会長も参列した。福岡から訪れたという王氏は報道陣の取材に応じ「先生はすごく野球が好きでね。応援もしていただいた。大変お世話になった」と振り返った。石原さんとの思い出については「外で見ていると強そうに感じられたんですけど、実際にお会いするとすごく優しくて。お会いした人の方が、先生との距離が縮まるんじゃないかな」と懐かしんだ。続けて「今日もものすごく多くの人が来られて、それだけ皆さんから慕われた方だろうと思っています」と語った。

祭壇は湘南の海と空をイメージし、青や白のカーネーションなど約5000本の花で装飾。祭壇の横にはヨットのセールが飾られていた。会場には著作約300冊の表紙が並べられ、石原さんの書斎とアトリエを再現したセットもあった。書斎の机には石原さんが生前最後に愛用していたワープロが展示されており、次男でタレントの石原良純は「家には数台あった。壊れても新しいものが使えないから同じものを使っていたんですよ」と頬を緩ませた。アトリエには石原さんが数年前に描いたという良純の絵が飾られていた。四男で画家の延啓氏は「脳梗塞をやって、完成はしていないです。(良純は)濃いから描きやすかった説もある」と笑顔を見せた。【沢田直人】

<4兄弟がそろう>

元東京都知事で作家の石原慎太郎さんのお別れ会が9日、都内のホテルで開かれた。式典に先立ち、石原さんの長男で元自民党幹事長の伸晃氏ら4兄弟が取材に応じた。伸晃氏は「縁があった皆さまの努力でお別れの会ができたこと、心から感謝申し上げます」と一礼。次男でタレントの良純は「石原慎太郎は、皆さんの夢を託されて生きた人間。応援してくださった皆さんにお別れする時間をちゃんと作らないといけない」と話した。案内状の送付などの事務作業を行ったという三男の宏高氏は「兄弟力を合わせてできたと思う」。四男で画家の延啓氏は会場の装飾に携わった。