安倍晋三元首相の昭恵夫人は8日午後、安倍氏が心肺停止の状態で搬送され、治療を受けていた橿原市の奈良県立医大病院に到着した。近鉄大和八木駅に着いたときは関係者に囲まれ、うつむきながら歩いた。夫人の到着からほどなくして、安倍氏の死去が発表された。支え続けた夫と、突然の別れとなった。

2人は1987年に結婚。子どもはいなかったが、ダックスフントの「ロイ」を飼い、おしどり夫婦で知られた。安倍氏は戦後最年少で第1次政権を担う直前の06年9月、日刊スポーツなどのインタビューに応じた際「こんなに早くこんなことになるとは思わなかったけれど、なったからには最後まで頑張って」と夫人から激励されたと明かし、毎朝、果物をすりおろした夫人特製の青汁を飲んでいるとのろけた。「家内がほめてくれると勇気が出る」とも語り、安倍氏の活動の原動力だった。ゴルフが趣味で、ともにラウンドすることもたびたびだった。

安倍氏が持病の潰瘍性大腸炎で第1次政権を辞職した後、夫妻はともに失意の日を過ごしたとされる。安倍氏が第2次政権に返り咲く前には毎朝1時間、いっしょにジョギングをして体力づくりもサポート。多忙な夫に代わって、地元の山口4区も守った。

安倍氏の「足かせに」なったこともある。2017年、大阪府豊中市の国有地が小学校新設計画の過程で約8億円値引きされた森友学園問題では、一時、小学校の名誉校長に就任。籠池夫妻との写真も出た。後に財務省の決裁文書改ざんに発展する一大スキャンダルでは昭恵夫人との関連性が疑われ、国会審議で何度も夫人の名前が出た。安倍氏は「私も妻も一切関係ない」と妻の国有地売却への影響を否定したが、首相夫人の行動を野党が国会追及するなど前代未聞だった。

居酒屋「UZU」を経営し、芸能人を含めた人脈の広さで知られる昭恵夫人。突然の不幸に見舞われた。【中山知子】

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