藤井聡太王位(竜王・叡王・王将・棋聖=20)が6日、20代初タイトルを獲得した。豊島将之九段(32)の挑戦を受ける、将棋「お~いお茶杯第63期王位戦7番勝負第5局」が5日からの2日制で静岡県牧之原市「平田寺」で行われた。

対局は藤井が豊島を下し、対戦成績3勝1敗で防衛し、3連覇を果たした。5冠を堅持し、通算タイトル獲得10期と大台に乗せた。これは史上9人目となる。20歳1カ月での達成は史上最年少、初タイトルから2年1カ月での達成は最短記録。タイトル戦負けなしV10も前人未到の記録でもある。 「ひふみん」こと、加藤一二三・九段の「ひふみんアイ」をお届けします。

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藤井王位が巧みに攻めをつなぎました。封じ手(60手目)の後手8六歩。攻め続けて、手になると思っていました。さすがです。その直後、豊島陣が左右に駒を配置して中央がパカッと開いていたのを突いた後手5七歩で方針が決まりました。さらに戦線を拡大した68手目の後手6五歩と、うまい手順を用意して戦う藤井流の指し回しが光りました。

終盤後手1三角(94手目)で有利を確定させた後、すぐに後手6九銀と打ち込めば、勝負は早かったでしょう。

豊島九段は89手目の先手7二銀が敗着。結果的にその銀を渡してしまいました。藤井王位の持ち駒が銀1枚では大技はかかりませんでしたから。2枚にして、局面を悪くしました。終盤の構想に問題ありでしょう。

今シリーズ、藤井王位の後手番での角換わり腰掛け銀への応対に注目していました。質量ともにすぐれた研究を、盤上で表現しました。来月から始まる竜王戦でも、どんな手を披露してくれるのか、楽しみです。