東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、KADOKAWAが大会スポンサーに決まる約3年前の16年春以降、同社会長の角川歴彦(つぐひこ)容疑者(79=贈賄容疑で逮捕)らが共謀し、組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78=受託収賄容疑で再逮捕)らに複数回、選定に向けた依頼(請託)をしたとみられることが15日、分かった。関係者によると、角川容疑者は「コンサルタント契約をして金を支払うことは了解したが、賄賂とは知らなかった」と否認している。

KADOKAWAは五輪関連業務を担う「2021年室」を同じ16年4月に設立。東京地検特捜部は、同社が早い段階から働きかけをしたとみて調べている。関係者によると、角川容疑者はKADOKAWA顧問の元専務芳原世幸容疑者(64=贈賄容疑で逮捕)、21年室長を務めた馬庭教二容疑者(63=同)と共謀。16年春から翌17年の初めにかけて、高橋容疑者や同容疑者の電通時代の後輩深見和政容疑者(73=受託収賄容疑で逮捕)に出版分野の「オフィシャルサポーター」に選ばれるよう請託したとみられる。

17年4月と5月、角川容疑者は高橋容疑者らと面会。当時はKADOKAWAと別の出版社の計2社が候補とされたが、組織委会長だった森喜朗元首相(85)が別会社に難色を示し、その調整目的だったとみられる。5月は東京・赤坂の料亭で会食。角川容疑者と高橋容疑者の他、深見容疑者、森氏、別会社の幹部らも出席していた。

2社には組織委に支払うスポンサー料と別に、高橋容疑者側にKADOKAWAが7000万円、別会社が3000万円を提供するスキームがあった。高橋容疑者側が主導し決めたとみられ、別会社は降りた。KADOKAWAは19年4月にオフィシャルサポーターになり、公式ガイドブックなどを出版。特捜部は送金された計約7600万円が仲介手数料で、賄賂に当たるとみている。

角川容疑者は90年代から同社をけん引し、絶大な影響力を誇ってきた。「鶴の一声で全てが決まる」。社内では、トップの意向をかなえるため社員が奔走する「会長案件」の存在が指摘されていた。元社員は「その意向は絶対」という。KADOKAWA関係者の1人は「芳原容疑者以下の判断で支払える金額ではない」と打ち明ける。