安倍晋三元首相の国葬反対を訴えるデモ活動が、会場の東京・日本武道館周辺で行われた。周辺道路も規制される中、時には一触即発ムードとなった場面も散見した。

近くの公園で決起集会を行った団体は、約400人で正午からデモ行進を開始した。警察車両を先導に、日本武道館に最接近できる九段下交差点へ。長蛇の列は500メートルを超え、「国葬反対」の大合唱。アニメ「アンパンマン」のテーマ曲などを大音量で流し、踊りながら体で反意を表現する人もいた。20代女性は「安倍総理はアベノミクスで格差を生み、アベノマスクで税金をムダ使い。国民みんなで弔意なんて示せません」と憤った。

反対派と賛成派が、目の前で対峙(たいじ)した構図も発生した。警察官が間を仕切る中、反対派の声のボリュームが上がると、賛成派からは「帰れ、帰れ」コール。「国葬を守る我々がはね返し、ヒソヒソと反対派が帰っていった」と拡声器で叫ぶと、反対派からの罵声も最高潮に達した。気持ちが高ぶる参加者同士がもみ合いとなり、警察官に後ろから押さえ付けられる人も。安倍氏のTシャツを着用し、水鉄砲で水をかけられるパフォーマンスを行うグループもいた。

葬儀開始10分前の午後1時50分には歩道でデモ行進する学生中心の集団が、警察官約100人と衝突した。歩道を埋め尽くす形で「今すぐ、やめろ」など抗議する一方、警察は「ただちに中止しなさい」と呼びかける押し問答は、葬儀終了の午後4時まで続いた。

国会正門前での市民団体主催集会には、日本共産党の志位和夫委員長(68)や社民党の福島瑞穂党首(66)らも参加。志位氏が「岸田首相は強行してしまえば済んだことになると、たかをくくっているかもしれませんが、そうはいかない」と述べ、福島氏も「憲法違反の法的根拠のない国葬を私たちは認めない」とマイクを握った。【鎌田直秀、寺沢卓】