東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、前会長の角川歴彦被告(79)が贈賄罪で起訴された出版大手KADOKAWAの夏野剛社長(57)が5日、都内で会見を開き、「当社への信頼を裏切り、多大なるご心配とご迷惑をかけた。深くおわびしたい」と謝罪した。自身が昨年8月から務める政府の規制改革推進会議の議長も「信頼回復に専念しなくてはいけない立場なので」と、辞任する意向も表明した。

同社は5日に角川被告と松原真樹副会長の辞任を取締役会で承認。再発防止のために外部の弁護士らで構成する「ガバナンス検証委員会」を5日付で設置したと発表した。夏野氏は「今後、会長と副会長の後任をたてる予定はない。全体事業への影響はない」と述べた。

同被告の社内への影響に関しては「業界全体のリーダーとしての、知見、経験、判断能力は、社員が非常に頼りにしてきた。前会長が関心を持たれる分野、ジャンルに関しては深く関与していたが、全体としては一部」としたが、ワンマン経営かとの質問には「すべての事象に判断を仰ぐことは物理的に無理。そんな時間はない。すべて会議で決めているし、青式で動く体制にはなっていた。ワンマンというところまではいっていない」と、やんわりと否定した。同被告の取締役の職は継続する。

外部の弁護士で構成する調査チームは調査経過を公表。贈賄に該当する可能性があると法務部門から指摘されていたのにコンサルティング業務委託契約として税込み7665万円を分割で支払っていたとし、国広正委員長は「法的判断は裁判に任せることになるが、贈賄行為と評価され得る疑わしい行為には間違いない。上場企業のKADOKAWAがこのような契約を結ぶことは不透明で不適切」と厳しく指摘した。

一方、起訴内容を否認している角川被告の弁護人はこの日、東京地裁に保釈を請求した。【鎌田直秀】