素性を隠して日々、ラジオ番組のトークをせっせと書き起こし、インターネットにアップし続ける「謎のラジオ書き起こし職人」。それが、みやーんZZさんだ。なぜ、そんなことを? ラジオ局に怒られませんか?【取材=秋山惣一郎】

-なぜ書き起こしを始めたんですか

「ラジオが好きで、よく聴いてるんですけど、放送ってそのまま消えちゃいますよね。もったいない、文字に起こしてとっておきたい、と思って『この番組のあの特集が面白かった』といったことをブログに書いてたんです。それが割と反響があって、楽しくなっちゃったんです。で、トークそのものを書き起こすようになりました」

-それが今や専業に

「元々は普通の会社員で趣味でやってただけですが、5年ほど前から専業になりました。今はインタビュー素材のテープ起こしや、ラジオに関するコラム執筆の依頼もいただいてます。趣味のラジオ書き起こしが仕事につながりました」

-記事はほぼ毎日、アップしてますね

「基本的に365日、ほぼ毎日やってます。音楽、カルチャー、お笑いを中心に地方局も含めて20~30番組。2台のラジオに録音して一日中、聴いてます。面白かったところをメモしておいて、後で書き起こす。以前は、自分で聴いて、すべて起こしていましたが、今は音声認識ソフトを補助的に使っています。事実関係をチェックして、関連する動画や画像を貼り付けて、と10分ほどの放送に1時間ぐらいかかります。ラジオは移動中でも『ながら』で聴けるし、パソコン1台あれば、どこからでも配信できる。サッカーを見に行った英国から配信したこともあります」

-苦労はありますか

「元プロレスラーの天龍源一郎さんは難しかったです。当時は、自分で聴き起こしていたんですが、しゃがれ声と滑舌が聞き取りづらくて。主語を省略したり、『アレ』『ソレ』といった指示代名詞を多用する人も難しいですね。その点、アナウンサーは、話すテンポ、発声など、しっかり話をされます。TBSの安住紳一郎さんは、音声認識ソフトの再現精度がとても高いです」

-いわゆる「バズる」番組を選んでるのですか

「『バズる』だろうけど興味がない番組を起こしても楽しくないです。好きでやってることなんで、楽しくやりたい。好きな番組だけですね」

-反響はいかがですか

「この夏、福岡の民放ラジオでマージャン好きの漫才コンビ・シソンヌのじろうさんが『マージャンのプロリーグ・Mリーグ“KADOKAWAサクラナイツ”のスポンサーになりたい』みたいな話をされてました。その書き起こしが、チームの方に伝わって、スポンサー契約につながった。選手のユニホームに『シソンヌ』と入ってます。じろうさんは、私の記事をリツイートしていたので、存在は認識されているかもしれません」

-近年、音声メディアの復権が言われます。サイトの人気は、その流れに乗ったものだと思いますか

「その実感はないです。『ラジオが好きだ』と言うと、今も『何で?』という反応が返ってくる。ラジオファンは母数が小さいので、増えたといっても、やはりマイナーなメディアですから。私のサイトのページビューは月間150万ほどで、始めたころの10倍になりましたが、ラジオへの関心の高まりというより、『誰が何を言った』というネットニュース的に読まれているみたいです。ラジオの復権とつなげて考えるのは、少し違う気がします」

-ラジオ局から何か言われませんか

「『どう思われてるのかな』という思いは、常にあって『すみません、ご迷惑でなければ』と、あくまで低姿勢でやってます。好きな番組を起こしているんで、局やパーソナリティーに嫌われたり迷惑をかけたりしたくない。誤解、曲解されないよう、前後の文脈も丁寧に書き起こすよう心がけています。読んでくれた方が、番組のファンになってくれたらうれしい。できるだけ多くの人のメリットになって、みんなに楽しんでもらえるサイトを作っていきたいです」

◆みやーんZZ(みやーん・だぶるぜーた) プロフィル非公表の「謎のラジオ書き起こし職人」。11年、趣味でラジオの書き起こしをスタート。17年から「アフター6ジャンクション」(TBSラジオ)などの公式書き起こしを担当するほか、日刊サイゾーで「Radio Edit」を連載。「miyearnZZ Labo」でラジオ書き起こしを随時更新中。