将棋の最年少5冠、藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=20)が史上最年少、プロ入り最速で通算300勝を達成した。名古屋市の名古屋将棋対局場で23日に行われた第81期順位戦A級6回戦で佐藤天彦九段(34)を110手で下し、未放映のテレビ棋戦も含めて300勝59敗とした。

勝率8割3分5厘は最高記録。20歳5カ月での達成は羽生善治九段(52)の21歳7カ月を更新する最年少記録となり、プロ入り6年2カ月での達成は、羽生の6年4カ月を抜く、最速記録となった。

藤井が最年少名人獲得を目指すには、負けられない大一番で、節目の300勝を達成した。先手の佐藤天が矢倉戦を目指し、中盤まで互角の戦いが続いた。終盤に藤井が鋭い踏み込みから巧妙な手順で攻めをつなぎ、寄せきった。

終局後、藤井は中盤での長考について「どちらも銀を繰り出して攻めていく筋があるので、展開次第では攻め合いになる形だった。どうバランスを取るのか難しい局面が続いていた」と振り返った。

深夜まで続いた激闘に「すぐに終盤になってしまうような変化が多く、距離感が難しい将棋だった」と話した。

これでリーグ成績は5勝1敗、単独首位に立った。現在、佐藤とは第48期棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定(挑決)2番勝負を戦っている。藤井が第1局を先勝し、27日の第2局に勝てば渡辺明棋王(名人=38)の挑戦権を獲得する。年度内6冠の可能性もある。

史上最年少の14歳2カ月でデビュー。20年11月には羽生に次ぐ、デビューから4年1カ月で200勝を達成した。それから約2年、8大タイトルのうち竜王など5冠を保持し、戦う相手のレベルが上がる中での偉業達成だった。

300勝は通過点。27日の棋王戦挑決2番勝負第2局に向け「本局をしっかり振り返った上で、いい状態で臨めればと思います」。史上最年少6冠を目指す。【松浦隆司】