22年も将棋界、囲碁界は盛り上がりを見せた。将棋界では藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=20)が2月、19歳6カ月の史上最年少で5冠達成を成し遂げた。その後、叡王、棋聖、王位、竜王の順に防衛し、5冠を堅持。棋王の挑戦権も獲得し、年度内6冠へ大きく前進した。来年1月には、羽生善治九段(52)を挑戦者に迎える王将戦7番勝負が開幕する。本紙「ひふみんアイ」でおなじみ、加藤一二三・九段(82)が「スター対決」の見どころを語った。

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タイトルを過半数保持する人が最も研究しているのですから、5冠堅持も当然でしょう。藤井さんの将棋の特徴は、相手の甘い手を見逃さないこと。見つけたら針で穴を開け、キリでもみ込み、クイを打ち込んで砕いてしまうような指し手を見せてくれました。

昨年までと違い、ギリギリの戦いが多かったのは確かです。竜王戦がいい例で、広瀬八段にタイトル戦で初めてと言っていいくらい苦しめられましたから。それでもはね返してしまうのが、現役タイトル保持者の現役タイトル保持者たるゆえん。タイトル戦のシリーズでも、開幕局で黒星を喫したものの、次の対局までには必ず修正してきた能力の高さは称賛に値します。

ほかの棋士にとって、今の将棋界は藤井さんを倒さないと自分の未来がありません。来年以降も、藤井さんが研究してないだろうと思える手順をあえてぶつけてくるでしょう。81マスの中で繰り広げられる指し手が進化するから、将棋は面白いのです。苦戦するかもしれませんが、そこから考えて踏ん張るという長所を生かして、タイトルを積み重ねてほしいと願っております。

その藤井さんと羽生さんが初めてタイトル戦でぶつかる、年明け早々の王将戦は見ものですね。羽生さんが王将戦の挑戦者決定リーグを6戦全勝で勝ち抜けたのは、すばらしいの一言に尽きます。最新将棋への研究と、対局での指し手がマッチしており、復調の気配を感じました。タイトル獲得通算100期を目指して、相当準備をしていることでしょう。

両者は、「秀才型の天才」。どちらの研究がより深いのか、どんな指し手を見せてくれるのか、今から楽しみにしています。