岸田文雄首相が同性婚を巡って「社会が変わってしまう」などと国会答弁した部分は事前に法務省が作成した原案にはなく、岸田氏による自前のアドリブだった可能性が6日、衆院予算委員会で明らかになった。

答弁の原案を作成した法務省の金子修民事局長は「質疑者とのやりとりの中での発言。当初、予定していた質問の準備としては及んでいなかった」と明言した。通常は原案を基に首相秘書官らが必要に応じて修正を行うが、松野博一官房長官は「(前秘書官の)荒井氏は関与していない。土台を基に(岸田氏が)質疑者との答弁の中において発出した」とした。

岸田氏は1日の衆院予算委で同性婚制度の導入について「同性婚は、すべての国民にとって家族観や価値観が、社会が変わってしまう問題だ」と答弁した。直後の3日夜に荒井勝喜前首相秘書官がLGBTなど性的少数者や同性婚を巡る取材に、岸田氏同様に「社会の在り方が変わる」「隣に住んでいたら嫌だ」などと発言。4日に更迭された。荒井氏が「秘書官室は全員反対」としたことについて松野氏は「(荒井氏が)確認したわけではなく、まったく根拠のないもの」とし、岸田氏の長男・翔太郎首相秘書官らに荒井氏と同様の認識がないと強調した。

岸田氏は政府・与党連絡会議、自民党役員会でも「政府の方針について国民に誤解を生じさせたことは遺憾であり、不快な思いをされてしまった方々におわびを申し上げたい」などと陳謝した。この日の衆院予算委は荒井氏の差別発言の説明を求める野党側に対し、根本匠委員長が拒否したことに反発した野党議員が退席し、質疑が一時ストップするなど紛糾した。岸田氏の答弁や荒井氏の差別発言で政権全体の意識が疑問視されている。8日の衆院予算委の集中審議では岸田氏は野党からの厳しい追及にさらされ、釈明に追われることになる。【大上悟】