警視庁捜査2課は16日、暴力行為法違反(常習的脅迫)や名誉毀損(きそん)などの疑いで、前参院議員で政治家女子48党(前NHK党)のガーシー(東谷義和氏)容疑者(51)の逮捕状をとった。関係者などへの取材で分かった。ガーシー容疑者は同日、インターネット配信で「日本には帰りません。窮屈な世界に帰りたくない」などと述べた。

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ガーシー容疑者は、インターネットの動画投稿サイト「ユーチューブ」で著名人らを中傷、脅迫したなどして著名人らに刑事告訴されていた。警視庁は1月、名誉毀損(きそん)や威力業務妨害などの疑いで、動画投稿で得た広告収入を管理する合同会社(東京・新宿区)の現代表、前代表の自宅など数カ所のガーシー容疑者の関係先を家宅捜索。任意の聴取を要請していたが、容疑者は1度も応じていなかった。

昨年7月の参院選で初当選したガーシー容疑者はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイを拠点に海外に滞在し、1度も国会に登院しなかった。15日の参院本会議で国会法に基づいて72年ぶり3例目となる「除名」の懲罰処分が採決され、議員の身分を失った。議員の資格を剥奪されたことで憲法で規定された国会議員は原則として国会の会期中に逮捕されないという不逮捕特権も失った。警視庁は本格的な捜査を進めるため逮捕状請求に踏み込んだものとみられる。

今後、警視庁は外務省にパスボート(旅券)の返納命令を要請する方針とみられ、ガーシー容疑者が応じなかった場合にパスポートは失効し、不法滞在となる可能性がある。その場合、滞在国に対し強制送還を求め、日本への帰国と同時に逮捕するものとみられている。

同党の立花孝志前党首は除名翌日の逮捕状請求について「想定された動きで情報は入っていた。ガーシーは一般人になったので我々が、とやかく語るべきではない」などとし、この日午前に党としての対応を協議し、記者会見を予定はないとした。また立花氏は15日の除名決定を受けたガーシー容疑者から「お世話になりました」と連絡が入ったことを明らかにした。

<ガーシー前議員めぐるこれまでの経過>

▼22年7月10日 参院選比例代表で初当選

▼同8月3日 海外に滞在しているのを理由に臨時国会を欠席

▼同10月3日 秋の臨時国会を欠席

▼同12月24日 動画投稿サイトで、著名人を脅迫するなどした疑いがあるとして、警視庁がガーシー容疑者に事情聴取を要請

▼23年1月11日 警視庁が関係先を家宅捜索

▼同1月23日 通常国会を欠席。参院が帰国と登院を要求

▼同1月30日 尾辻秀久参院議長が国会法に基づき出席を促す文書「招状」を発出

▼同2月22日 「陳謝」の処罰処分を参院本会議で決定

▼同3月8日 陳謝が予定されていた参院本会議を欠席

▼同3月15日 参院本会議で除名

▼同3月16日 警視庁が暴力行為法違反容疑などで逮捕状を請求