藤井聡太叡王(竜王・王位・棋王・王将・棋聖=20)が菅井竜也八段(30)の挑戦を受ける、第8期叡王戦5番勝負第1局が11日、東京都千代田区の「江戸総鎮守 神田明神」で行われた。対局は、タイトル戦14戦目にして初めて振り飛車党を迎え撃った先手の藤井が、菅井の三間飛車に落ち着いて対応し、先勝。3連覇に向けて好スタートを切った。第2局は23日、名古屋市「名古屋東急ホテル」で行われる。

藤井が腰を落とした。飛車を3筋に振った菅井に対し、自玉を戦場から遠ざける。8八に据えると、左美濃から銀冠に組み替え持久戦の意思を示した。相居飛車で序盤の研究が進んでいる角換わり、相掛かりという2本柱なら対局開始の午前9時から昼休の正午まで60手進んでもおかしくない。現代将棋としては珍しくスローな展開になった。4時間の持ち時間を惜しみなく使いながら、戦機をうかがった。

ペースが上がったのは、午後5時前の81手目からだった。持ち時間4時間のうち、藤井は残り17分(菅井58分)。一気に仕掛けてリードを広げ、9筋のもみ合いを制すると押し切った。

昨年9月、棋王戦挑決トーナメントの久保利明九段戦以来の振り飛車戦。時間を使って読みと形勢判断をしながら、チャンスをうかがうとスピードを上げた。緩急自在の指し回しで、同年8月のA級順位戦2回戦で完敗した菅井に先勝した。

昨年度は8大タイトルのうちの6冠を史上最年少で獲得した。こちらは持ち時間が長く、熟慮を必要とした。同時に、持ち時間の短い一般棋戦のJT杯、銀河戦、朝日杯、NHK杯を制した。こちらのグランドスラムは史上初の快挙でもある。決断力を要する早指し戦での速度が、終盤生かされた。

長丁場と、短期決戦の瞬発力勝負。初の振り飛車党との頂上対決で、7年前からキャリアを積んできた「二面性」を発揮して、叡王戦の神田明神での開幕戦を3連勝で飾った。

【第8期叡王戦5番勝負第2局以降の日程】

◆第2局 4月23日、名古屋市「名古屋東急ホテル」

◆第3局 5月6日、名古屋市「か茂免」

◆第4局 5月28日、岩手県宮古市「浄土ケ浜パークホテル」

◆第5局 6月17日、千葉県柏市「柏の葉カンファレンスセンター」

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