「うな丼大臣」の命運は…。

谷公一国家公安委員長は26日、15日に和歌山市で起きた岸田文雄首相に爆発物が投げ込まれる事件が起きた時、視察先の高知県で警察庁から連絡を受けた後も「うなぎ丼はしっかり食べさせていただいた」と発言した問題を、釈明した。

都内で取材に応じ「舌足らずだった。誤解を招きかねない発言をしたという意味で適切だったとは思わない」と述べた。「万全の警備を取るよう指示し、その上で食事を取った」と強調し、発言を撤回するかと問われると「(うな丼を食べた)事実以外のことは言っていない」と述べ、撤回しない考えを示した。

国家公安委員長は政府の治安対策の責任者。5月のG7広島サミットを控え、自民党内でも「あまりにもゆるい」との声が聞かれた。立憲民主党は参院本会議の質疑で、岸田文雄首相に「『うな丼大臣』は即刻更迭してください」(宮口治子議員)と求めたが、首相は「出張先で事件発生の報告を受け必要な指示、情報収集を行いながら業務を継続したと聞く。引き続き職務に当たってもらいたい」と、更迭要求を拒否した。

谷氏の発言は25日の自民党議員の会合でのもの。首相襲撃という一大事の話題に、昼食のうな丼を絡める緊張感のなさに、立民の安住淳国対委員長は「谷氏のもとで、警察が緊張感を持ってサミット警備できますかという話」と批判した。

岸田内閣では昨年10月から12月にかけて、4人の閣僚が立て続けに更迭される「辞任ドミノ」が起きたが、谷氏も体調面の問題から一時、交代検討の情報が流れ、最終的に続投となった。「辞任ドミノ」は、進退の判断が後手に回った岸田首相の対応の遅れが招いた。サミット成功へ1つのカギを握るのが、治安対策。その責任者の失言は、沈静化していた閣僚の資質をめぐる問題を再燃させかねない。【中山知子】