藤井聡太叡王(竜王・王位・棋王・王将・棋聖=20)が3連覇を達成した。

28日、岩手県宮古市で行われた将棋の第8期叡王戦5番勝負第4局で挑戦者の菅井竜也八段(31)を下した。同日午前9時からの対局は、同10時51分に千日手が成立。11時30分から先手後手を入れ替えての指し直し局も、午後6時32分に116手で千日手となった。午後7時15分からの再指し直し局で後手となった藤井が午後9時8分、90手で菅井を振り切った。これで対戦成績を3勝1敗として防衛し、6冠を堅持した。

「全体を通して大変な戦いでした」。1日3局の末につかんだ大きな白星に、藤井はホッとした様子を見せた。5番勝負について振り返った際にも、「難しい将棋ばかり。相穴熊が多かったですが、距離感がつかめていないところがあったと思う」とした。

タイトル戦での「2千日手」は昨年6月の棋聖戦第1局、永瀬拓矢王座(30)戦以来。叡王戦では、昨年5月の出口若武六段(28)との第2局でも経験している。菅井との千日手も公式戦3局目となった。4年前の竜王戦4組決勝、3年前の棋聖戦決勝トーナメントで成立した千日手の指し直し局は、ともに勝っている。三たび下した。

20年7月18日、その2日前に初タイトルとなる棋聖を獲得した藤井は、タイトルホルダーとして初の対局となるJT将棋日本シリーズで菅井と当たり、白星を挙げた。18歳の誕生日を翌日に控えた会見で、「強くなりたい」と力強く言い切っていた。その菅井とのタイトル戦初の振り飛車党との頂上対決で、強さを見せつけた。「苦しいシリーズで結果を出せたのをうれしく思います」。

27日の前夜祭、地元宮古市の郷土芸能「黒森神楽」の権現舞で獅子頭に頭や肩をかんでもらった。1年の無病息災や五穀豊穣(ほうじょう)、大漁成就などを祈る縁起物の神事だ。必勝祈願の御利益があった。

31日には、3勝1敗として史上最年少名人まであと1勝としている名人戦第5局がある。三陸から勇躍、信州へと向かう。【赤塚辰浩】