第169回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が19日、東京・築地の料亭「新喜楽」で行われた。芥川賞には市川沙央(いちかわ・さおう)さん(43)の「ハンチバック」(「文学界」5月号)が選ばれた。第128回文学界新人賞受賞作でもあるデビュー作。芥川賞初ノミネートでの受賞となった。
市川さんは難病「先天性ミオパチー」のため、人工呼吸器や電動車椅子を使いながら生活。都内で記者会見に臨み「小説を書き始めて20年の中、芥川賞を目指してはいなかったので驚いている」とした上で「去年の夏、初めて純文学(受賞作)を書いた。非常にうれしい。我に天佑(てんゆう=天の助け)あり、と感じている」と喜びを語った。
受賞は「同じ病気の7つ上の姉に、LINEで真っ先に報告した」といい「この半年、感情がない。今なら、すご腕のスパイになれると思う」と笑わせた。
受賞作は、背骨が極度に湾曲する難病の主人公の生活を、ユーモアを交えて描いた。「芥川賞で、これまであまり(重度障がい)当事者の作家がいなかったことを問題視しこの作品を描いた。どうして2023年にもなって初めてか、皆さんに考えてもらいたい」と話した。訴えたいことに読書バリアフリーを挙げ「(障がいのある人が)読みたい本を読めないのは権利の侵害と思う。環境の整備を進めてほしい」と訴えた。
選考委員の平野啓一郎氏は講評で「作品としての強さ」が、選考委員の圧倒的な支持を得たと明かし「最初の投票でほぼ決まった。主人公の状況と社会の関係、作者と作品、社会の関係において、高いレベルでのバランスが取られていた」と評した。【中山知子】

