将棋の藤井聡太棋王(竜王・名人・王位・叡王・王座・王将・棋聖=21)が同学年の伊藤匠七段(21)の挑戦を受ける第49期棋王戦コナミグループ杯5番勝負第2局が24日、石川県金沢市の「北國新聞会館」で行われ、後手の藤井が伊藤を破り、今シリーズ初勝利を挙げた。対戦成績は1勝1分。能登半島地震の被災地に熱戦を届けた。第3局は3月3日、新潟県新潟市「新潟グランドホテル」で行われる。

終局後、藤井は「攻め込まれて、玉が薄い形になり、自信がなかった。頑張れるがどうかだと思っていた」と振り返った。

ともに02年生まれの同学年対決。両者のタイトル戦での対決は棋王戦で2度目となった。先手の伊藤が藤井の得意とする角換わりへ誘導した。最新形の角換わりで、あまり前例のない形になったが、お互いの指し手が非常に速く、両者の研究の深さと広さがうかがえた。藤井が1時間23分の長考で昼食休憩に入ると、午後からは一転、じっくりした展開になった。

伊藤の的確な攻めに一時はリードを奪われた藤井だったが、相手の攻めを我慢強く受けた。71手の局面では自玉の周辺に金が1枚だけだったが、手駒の角2枚、桂と頭の丸い駒を有効に使い、囲いを再構築した。ここから切り返し、逆転勝ちした。

今期の棋王戦5番勝負は4日に富山県魚津市で開幕後、第2局は金沢、第3局は新潟と能登半島地震で被害を受けた地域を転戦する。被災地での熱戦を誓う藤井にとって、「金沢対局」は特別だった。

09年以降、金沢での棋王戦の対局でほぼ毎年、駒と将棋盤を提供してきた石川県珠洲市の塩井一仁さん(63)に能登半島地震で自宅が倒壊した。塩井さんは妻を亡くした。震災から約3週間後、失意の中、倒壊した自宅から漆を重ね塗りして字を浮き立たせた高級品の「盛り上げ駒」4組を見つけ出した。

第2局に使われた駒は「清定書」。タイトル戦に使われたことがなく、塩井さんの「ゼロからスタートするきっかけにしたい」の思いがこもった奇跡の駒に藤井に「大変な状況の中での提供に感謝しています」と思いを重ねた。

対局で駒音を響かせた藤井は「珍しい書体だったが、対局が始まると、すっと局面に入れた」と感想を述べ、「特別な駒と思うので、いい将棋にしたいと思う気持ちは強くあった」と話した。

第1局は後手の伊藤の作戦が成功し、藤井は公式戦初の持将棋(引き分け)を経験した。前夜祭で藤井は「新たな戦いが始まる思い、一局一局をやっていきたい」とゼロからスタートを誓った。同学年対決を制し、対伊藤戦は8連勝。不利な将棋を粘り抜き、被災地に熱戦を届けた。【松浦隆司】