自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けて14日、参院政治倫理審査会が開かれ、自民党安倍派(解散決定)の世耕弘成前参院幹事長、西田昌司衆院議員、橋本聖子元五輪相の3人が出席した。

「5人組」と呼ばれた安倍派幹部の1人で、裏金問題の「キーマン」とされた世耕氏だが、緊張感漂う政倫審の場で、セクシー衣装を着た女性ダンサーが出演した自民党和歌山県連主催の青年局会議後の懇親会に自身の秘書が出席していたことを明かした。裏金だけなく、ハレンチ会合問題でも釈明に追われる形になった世耕氏に対しては、自民党内でも「みっともない」と突き放す声も聞かれた。

世耕氏は、会合出席者が口移しで女性ダンサーにチップを渡す様子の写真が報じられたことを念頭に「ああいう写真を撮られるのは極めて不適切。秘書には厳重注意をし、自宅謹慎を申しつけた」と強調。一方、自身の責任については明確に答えなかった。

会合に出席した世耕氏の秘書が、チップを口移ししたとの指摘もある中、チップは「裏金」だったのではと日本維新の会の音喜多駿参院議員に指摘された世耕氏は「このお金が秘書のものかどうかも分からない。少なくとも還付金が原資のお金を、地元を対象に使ったということは、1円もない。明確に申し上げたい」と「明言」した。

ただ裏金問題では明言どころか「ゼロ回答」の連続。最大の注目点だった、2022年4月に1度廃止方針が決まった安倍派の裏金キックバック方針が8月の幹部協議を経て復活した経緯について、幹部協議に出席した1人の世耕氏には質問が集中したが、世耕氏は自分の関与を否定した。「だれが決めたのか、私自身が知りたい」と述べ、幹部会合の中で代替案が出たことに言及した世耕氏に、立憲民主党の蓮舫参院議員が「誰が代替案を提案したのか」と問うても「記憶がない」と発言。蓮舫氏に「都合のいい記憶だ」と皮肉られる場面もあった。

キックバック復活の経緯をめぐっては衆院政倫審での西村康稔、塩谷立両氏ら幹部の主張が食い違い、さらに世耕氏の知らぬ存ぜずぶりが露呈。蓮舫は「(偽証が問われない)政倫審の限界を感じた」と口にしたが、世耕氏は「知っていることは全部、正直に話した」と強調した。

この日までに衆参両院政倫審に岸田文雄首相ら自民党議員9人が出席したが、新事実は明らかにならず。そんな中、野党が「ラスボス」として「爆弾発言」に期待する下村博文元文科相(69)が18日の衆院政倫審に出席することが決まった。下村氏も、キックバック復活が決まった幹部会合に参加しているが、18日の説明次第では、証人喚問を求める声がさらに強まる。保身か説明責任か、自民党の本質が問われる最後のチャンスになりかねない。【中山知子】