福岡のご当地グルメの1つ、うどんの「関東進出」が続いている。昨年1号店が開店し話題になった北九州のソウルフード「資さんうどん」に続き、先月21日、創業74年、博多うどんの老舗「因幡(いなば)うどん」が福岡以外で初となる店舗を、東京の文化の発信地・原宿のど真ん中に構えた。後継者不在やコロナ禍といった厳しい環境を乗り越え、74歳での初挑戦。柔らかいがもちもちのもちふわ麺と優しいだしスープを味わってみた。【中山知子】
★クチコミで話題に
2024年4月に、原宿・神宮前交差点の一角にオープンした新しい商業施設「ハラカド」。国内外の買い物客でにぎわう建物の5階に、現在店舗を展開している福岡県以外では初めての出店となる「因幡うどん」関東1号店が先月21日に、オープンした。さまざまな飲食店が集まるエリアの一角で、20席の専用席がある。オープン後にのぞいてみると、席がほぼ埋まる時間帯も多い。福岡出身者の間でもクチコミで話題になっていて、ふるさとの味を求めて店を訪れている人もいるようだ。
福岡で人気のごぼう天うどん(クラシック、790円)や、まん丸の練り物1枚が存在感を示す昔からの定番、丸天うどん(790円)、肉ごぼう天うどん(クラシック1150円、モダン1250円)のほか、うどんのお供として福岡では定番のかしわ飯(200円)や丼、ごはんものなども合わせ、40種類以上のメニューがそろった。
因幡うどんは福岡で、老舗のうどん店として知られる。戦後間もない1951年(昭26)の創業。現在、福岡県内で8店舗を展開しているが、「74歳の初挑戦」が東京の日本文化の発信地の1つ、原宿でのデビューになった。店の歴史を考えるとのギャップもあるが、この「転機」が実現したきっかけは、9年前の出来事にさかのぼる。
因幡うどんは一時、後継者不在の事態に陥った。2016年、とんこつラーメンで知られる「一風堂」などを展開する福岡の企業「力の源ホールディングス」が事業を受け継ぎ、店の継承がはかられた。今回の原宿出店は、その縁が1つのきっかけになった。
★文化の発信基地に
「力の源ホールディングス」の担当者によると、「一風堂」を通じて「ハラカド」の運営側と関係があったこともあり、因幡うどんの関東進出について話が出ると、一気に進んだという。正式に東京出店が決まったのは今年はじめ。原宿の地となったことについては「この施設自体が、文化の発信基地。因幡うどんという『カルチャー』を広げるに当たっては、いちばんいい場所なのではないかということで、話が進んだ」という。
新型コロナ禍をへて、オンラインストアで県外からのお取り寄せ需要が高まるなど、消費者の食をめぐる意識も以前とは変わった。原宿は日本だけでなく、インバウンド客も多い。そんな場所からの新たな「発信」が決まった。
福岡のうどんだが、「博多うどん」を掲げる。福岡のうどんは、太めのやわらかい麺が使われる。こしの強さで知られる讃岐うどんとは対照的だが、もちもちでふわふわの「もちふわ」食感が特徴。同店では、麺は数種類をブレンドした「よこいと」という独自開発の小麦粉を使う。つゆは、関東のうどんに比べて色も味もやさしい。創業時からこだわる天然素材の羅臼昆布やカツオなどの魚介類を使い、やさしい味わいを出してきた。「だしを味わう」といわれるゆえんだ。
東京出店に当たっては、福岡から責任者が上京しスタッフの教育にも当たった。
因幡うどんの出店に先立って、「資さんうどん」も今年2月、東京・両国に東京第1号店をオープンしている。ともに福岡の人気店ではあるが、因幡うどんの担当者は「同じ福岡のうどん店としてうれしく思う。私たちも同じようにたくさんのお客様に愛されるブランドを目指したい」とエールを送る。
★時代に合わせ変化
今後、関東でのさらなる出店については、検討中の段階だという。担当者は「まずは、まだあまり知られていない福岡のうどんの魅力を関東のお客様に発信することに尽力したい」とした上で「時代に合わせた変化を加えながら、創業100年にむけて挑戦を続けていきたい」とも話した。
■発祥の地の石碑も
とんこつラーメンやもつ鍋、めんたいこなど、どちらかというと「ガッツリ系」が人気という印象の福岡グルメ。そんな中で、福岡のうどんは「麺も柔らかく、おつゆもやさしい味。二日酔い明けや、ささっと朝食代わりに食べる人もいる」(地元関係者)という。
全国にはさまざまなうどんがあるが、うどんの発祥の地は福岡という説もあるとされ、福岡市博多区の承天寺には「饂飩蕎麦発祥之地」の石碑があることも知られている。
これまでは、福岡に行かないと本場の味をなかなか体験できなかった福岡のうどんだが、最近では次々と関東に出店している。
関東進出発表時にはSNSのトレンドワードになるなど根強いファンを持つ、北九州市が発祥の「資さんうどん」は昨年末、千葉・八千代市に関東第1号店をオープン。今年2月に東京・両国に東京1号店を構えた後、東京・足立鹿浜店、埼玉・北鴻巣店と、これまでに関東に4店を出店。ハイペースで関東出店を続けている。資さんファンを公言している同市出身で、シカゴ・カブス所属の今永昇太は今年3月、初の「公式アンバサダー」契約を締結。メジャー開幕戦の東京シリーズでは、資さんうどんのキッチンカーを必勝祈願会場の神田明神に並べ、選手や家族に人気メニューの「肉ごぼ天うどん」を振る舞い、話題になった。
福岡のうどんチェーンとして人気の「ウエスト」も、千葉県八千代市の「うどんウエスト」ほか、関東地区に複数の店舗を出店している。
一方、ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏は先月18日、自身が経営戦略顧問を務める会社が1977年創業の福岡のうどんチェーン「うちだ屋」を買収し、今後、関東や関西に出店する意向を明かしている。

