共産党の委員長や議長を歴任し、「共産党のカリスマ」を呼ばれた不破哲三さん(ふわ・てつぞう、本名上田建二郎=うえだ・けんじろう)が、30日に死去した。95歳。党関係者が明らかにした。
日刊スポーツでは戦後70年の2015年の年末、ニコニコとの共同企画で「戦後70年を斬る!! レジェンドの伝言」と題した連載で、不破さんにインタビューを行った。当時は戦後70年の年で、「安倍1強」といわれた第2次安倍政権下。そんな政治状況の中で、不破さんの数々の「伝言」が詰まった「不破節」を、再録掲載する。
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共産党の「カリスマ指導者」といわれた不破哲三前議長(85)は、戦後70年の間に起きた自民党の「変質」に、強い危機感を示した。今の「安倍1強」体制は「議会のからくりによる、架空の多数だ」と指摘。一方、共産党が、安保関連法廃案を目指して野党に呼び掛けている「国民連合政府」について、「国民的背景を受けた必然の流れだ」と強調した。持論は「主権在民」。与野党を問わない、超党派の任務だと訴える。
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-55年体制から政治を長く見てきた不破さんにとって、戦後70年の総括は
不破氏 私が国会に参加したのは、69年衆院選の直後。そこから見ると、政党がすごく変わった。自民党は今より、うんと強かった。72年の衆院選の得票は有権者比で34%だったが、昨年は17%。半分だ。当時は「1強」なんて言わずに野党とも議論し、まずいと思えば引く「のりしろ」があった。今は、議会のからくりで架空の多数を持つことを根拠に、思うことを何でもやろうという政党に変わった。野党も、綱領や基本的な政策を持ち、自民党に立ち向かう姿勢があった。
-政治家が真剣だったということ
不破氏 今の自民党は劣化し、危険な領域に足を踏み出している。野党も、政党助成金の分配で離合集散するのが当たり前。綱領はそっちのけで、政策も選挙向けのマニフェストだけだ。長い目で見る政策を持たず、日本の政治を弱体化させる要因になっている。その中で、新しい動きも出てきた。自民党が、結党以来守ってきた憲法解釈をひっくり返し、「戦争法」に足を踏み出した。反対する野党5党は一致して戦い、それに呼応して国民が声を上げ、行動に出た。戦後70年に、日本の未来を開く新しい足取りが聞こえている。
-自民党の変化は、安倍晋三首相の性格からか、それとも党が変質したのか
不破氏 政治が、実に荒くなっている。中心に立つ人が自己陶酔型。後先考えずにものを言ってしまう。マイナンバーも、始めてみたら手数が足りずに配り切れない、と。アベノミクスもご自慢だが、「3本の矢」がうまくいったのか、むしろ忘れてほしいんですよ。新しい3本の矢を出そうという時もスローガンが先で、政策の裏付けもいまだにつくれない。前の自民党なら、新しいことをする時は綿密に準備をした。
-共産党は、「国民連合政府」を提案している
不破氏 必然性のある流れだと思う。国民的な背景もある。私の経験でも、60年代の安保反対運動と今年の戦争反対の動きは、質が違う。当時の主力は組織動員。今回は今まで街頭に出たことがない1人1人が、声を上げた。この流れに政治がどう応えるかで、それぞれの政党の立場が決まる。我々の主張は、団結した意思を生かそうというもので、極めて単純、明瞭だ。
-若い世代に贈る言葉を
不破氏 この前、テレビを見ていたら、300万円の年収でどんな生活ができるか、日本と海外の国を比較する番組があった。フランスとチェコは相当な暮らしができるが、日本は将来の見通しも立たない。資本主義社会の中、国民は不合理な状態に置かれているが諦めず、変えられるという勇気を持ってほしい。
-政治家のあるべき形を、どう考えるか
不破氏 国民生活のあらゆる分野に責任を持ち、国民の立場で行使する。これが「主権在民」のための超党派的な任務ではないか。【取材=政治ジャーナリスト・角谷浩一、中山知子】
◆不破哲三(ふわ・てつぞう)本名・上田建二郎。1930年(昭5)、東京生まれ。東大卒。40歳で党書記局長に抜てき。69年に旧東京6区で初当選。82年に党中央委員会委員長、2000年に議長に就任。当選11回。06年1月に議長を引退。党のシンクタンク「社会科学研究所」所長も務め、理論面から長年、党を支えた。
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この連載では不破さんのほかに、今年10月17日に101歳で亡くなった村山富市元首相、伊吹文明・元衆院議長、立憲民主党の小沢一郎衆院議員の計4人に、インタビューを行った。

