富士通・藤田HC、選手のメンタルに自信あり

富士通・藤田智(ふじた・さとし)HC
富士通・藤田智(ふじた・さとし)HC

 昨年は無傷のまま2度目の栄冠に輝いた富士通。今年は10月1日のリーグ戦第4節で、パナソニックに9−24と完敗したが、藤田智ヘッドコーチ(HC、50)が見事にチームを立て直した。同29日のリーグ最終オービック戦をタイブレークの末、QBキャメロンからWR中村へのサヨナラTDパスで13−10で制すると、再戦となった準決勝では、開始早々にキャメロンのTDランで挙げた虎の子の7点を守り、オービックから初の完封勝利を飾った。

 「昨年より前が見えないまま試合が続いた」という藤田HC。しかし、ここへ来て選手の成長ぶりに手応えを感じている。「準決勝は選手のメンタル(の強さ)で勝てた。メンタルが大事だと各自が認識してくれた。やってきたことが間違っていなかった」と自信をみなぎらせた。

富士通オフェンスをけん引するQBコービー・キャメロン(右)
富士通オフェンスをけん引するQBコービー・キャメロン(右)

 パナソニックが準決勝でまさかの敗戦。決勝の相手は昨年の準決勝で死闘を演じたIBMになった。そのオフェンスについて、藤田HCは「マークを誰かに絞るのは難しい。やられるところは仕方がない。ちゃんと守れるところを守る」と割り切ったプレーを狙う。そして、ディフェンスに対しては「DLのブルックスは大きく、避けては通れない。自分たちのプレーをちゃんとやるしかない」と正攻法での突破を目指す。

 「メンバー全員が仕事をして、とどめを刺すヤツが刺す」。藤田HCは今年も総力戦で、チーム初の連覇にフォーカスしている。

◆藤田智(ふじた・さとし) 1967年(昭42)9月2日、愛知県生まれ。京大で競技を始め、QBとして活躍した。卒業後は京大コーチに就任、95年に日本一となる。その後はアサヒ飲料HCとして2000年にチームを日本一へ導く。富士通では創部20周年の05年からHCとなり、10年目の14年と昨年、日本一に輝く。第1回W杯などで日本代表のオフェンスを指揮した。

宜本主将が一人二役

今季からチームをまとめる宜本主将
今季からチームをまとめる宜本主将

 自ら立候補し、選手間で認められた富士通宜本潤平主将(27)が、自身の「口動」でチームをけん引している。藤田HCは「思っていることを口にでき、プレーもできる。自分の姿で引っ張っている」と全幅の信頼を寄せる。準決勝では、本来のWRとして8キャッチ、32ヤードを稼いだほか、RBの位置で5回走った。「同じ人間が別のことをできるのは強み。自分がRBに入ると5人レシーバーがいるイメージで、相手は守りにくい」と一人二役でオービックを混乱させた。

 チームの年齢構成で「上に30人、下に30人いて、ちょうど真ん中。ベテランと若手をかみ合わせようとしている」宜本。全選手に強い口調で「レギュラー争いをしていこう」と話し、自身も「水野、岩松、福井と常に競い合っている」。その姿勢がチームに活力を与え、決勝進出への原動力ともなった。18日には「もっとテンポの良くやり、ここ一番で取り切る」とあっと驚くTDを狙っている。

◆準決勝プレイバック:キャメロンが先制TD

準決勝第1Q、自身のランでTDを決めた富士通QBコービー・キャメロン
準決勝第1Q、自身のランでTDを決めた富士通QBコービー・キャメロン

富士通7−0オービック(11月26日・富士通スタジアム川崎)

 富士通は、大黒柱のQBキャメロンが立ち上がりにエンジンを全開。キープランでゴール前1ヤードに迫ると、第1Q2分16秒、自らTDランを決めた。その後は互いにFGを外すなど得点できずじまい。ともにディフェンス陣が踏ん張り、相手の前進を阻んだ。最後は富士通DBアディヤミが試合時間残り42秒、相手QB菅原のパスをインターセプトして激闘に終止符を打った。