<ダービー>◇26日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳牡牝◇出走17頭
大ベテラン横山典弘騎手の2つの“英断”が大きな勝利を呼び込みました。
1つは“前へ行く”という決断です。皐月賞で逃げたメイショウタバルが出走を取り消し、行く馬がいなくなったことで、ハナを切ってもいいくらいの勢いでスタートを出しました。大外から岩田康騎手のエコロヴァルツがハナを切り、武豊騎手のシュガークンも来たことで、3番手のインに待機。名手3人が織りなした1000メートル通過62秒2のスローペースにより、前にいなければ勝ち負けできない展開になりました。
直線も外に出さず、内ラチ沿いから一瞬の脚で抜け出しました。何度も乗ってきた府中の直線です。必ず進路が開くと分かった上でのイン突きでしょう。好位から経済コースを通って抜け出したのは、09年ロジユニヴァースで制した時と同じ。さすがでした。
もう1つの英断は“走らせない”と決めたことです。デサイルは前走・皐月賞のゲート裏で、横山典騎手が違和感を申し出て、競走除外となっていました。正式には、除外を決定するのは獣医師ですが、違和感や故障の予兆などを申し出ることができるのは騎手だけです。ラグビーの監督がスタンドにいるように、調教師は馬がコースに入った後はすべて騎手に任せます。
皐月賞という大舞台です。発走直前の除外となれば馬券の売り上げは返還となりますし、出走手当なども一切出なくなります。ベテランの横山典騎手でなければ言い出せなかったかもしれません。ですが、デビューからずっと乗ってきて、いつもと違う何かを感じたのでしょう。そのまま出走していたらどうなったのか、それは誰にも分かりません。ひとつだけ確実に言えることは、あそこでやめる決断をしたことが、このダービー制覇につながった、ということです。
“いちばん運のいい馬が勝つ”と言われるダービーです。デサイルにとって鞍上が横山典騎手だったことは最大の幸運でした。父エピファネイアがキズナの2着に敗れた13年ダービーと同じ、2分24秒3でキズナ産駒に勝利したことにもドラマを感じました。
2着ジャスティンミラノは、戸崎騎手が好位をキープし、勝ち馬から2、3頭分だけ外を回ったとはいえ、完璧に導きました。勝ち馬の一瞬の脚に譲りましたが、勝った人馬をほめるしかないでしょう。3着シンエンペラーはいい脚でしたが、最後の差は位置取りの差でしょう。トモに成長の余地を残しますし、秋にはもっと良くなる馬だと思います。(JRA元調教師)






