世界制圧への大一番だ。ドバイシーマクラシックを制したダービー馬シャフリヤール(牡4、藤原英)が欧州デビューに臨む。1862年創設の欧州中距離王決定戦プリンスオブウェールズS(G1、芝1990メートル、15日=英アスコット)へ向けて英国で調整中。18世紀から続く英王室主催ロイヤルアスコットにおける日本馬初Vがかかる。管理する藤原英昭調教師(56)に“海外戦略”を聞いた。

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御年96歳のエリザベス女王の耳へ、その勇名を響かせたい。日本が誇るダービー馬シャフリヤールが欧州デビューを果たす。挑むのは150年以上の歴史を誇る中距離王決定戦。不整地で高低差は約22メートルに達し、芝1990メートルにして平均勝ちタイム2分5秒656(過去10年)というタフなコースだ。起伏の少ない高速馬場を走り慣れた日本馬にとっては過酷な挑戦。指揮官は眼光を鋭くして意図を説明する。

藤原英師 今後いろいろと世界で挑戦していく中で、どこが合うのか確かめていかないと。今までとはフィールドが違う。適応するかどうか、試さないと仕方ない。重要な一戦になる。

今後の世界制覇計画を策定するための試金石だ。秋の凱旋門賞(G1、芝2400メートル、10月2日=パリロンシャン)には登録を済ませているが、今回の結果から欧州の芝への適性を見極めた上で、日米欧のあらゆるレースを検討する方針だ。すでに前走ドバイシーマCで海外初遠征を成功させたのは頼もしい。

藤原英師 ナーバスになって気を使うかと思ったけど、この馬のパフォーマンスを出せたのは大きい。人間でも初めての海外と2回目では違うやろ? 余裕ができる。それと同じ。

18世紀から続く英王室主催のロイヤルアスコットで、過去に勝利した日本馬はいない。今年のプリンスオブウェールズSも少頭数ながらハイレベル。20年覇者でドバイターフ同着Vのロードノース、米仏豪G1馬ステートオブレスト、5連勝中の新鋭ベイブリッジなど強豪ぞろいだ。女王即位70年のプラチナジュビリーで現地の注目度も高い。

藤原英師 記念すべき年に日本のダービー馬で挑める。出資する会員さんのためにも賞金をとりにいく。まずはここしかない。

真の王者は戦場を選ばない。誰もが着飾る華やかなスタンドへ、日本の力を見せつける。【太田尚樹】

◆日本調教馬のプリンスオブウェールズS成績 14年天皇賞・秋を制したスピルバーグ、香港C→イスパーン賞と海外G1を連勝し臨んだエイシンヒカリ、海外転戦1年目のディアドラと3頭が挑戦。いずれも6着と世界の高い壁に阻まれている。

◆日本ダービー馬の海外勝利 シャフリヤールのドバイシーマC制覇が、マカヒキの16年ニエル賞以来6年ぶりの勝利で、海外G1初制覇だった。12、13年とフォワ賞を連覇した3冠馬オルフェーヴルは、本番の凱旋門賞で2年連続2着。悲願まであと1歩だった。その2年目の13年は、キズナがニエル賞でルーラーオブザワールド(2着)との日英ダービー馬対決に勝利した。オルフェとともに出走した凱旋門賞は4着だった。

◆日本調教馬の英国G1制覇 武豊騎手が騎乗した00年ジュライCのアグネスワールドと、マーフィー騎手が手綱を取った19年ナッソーSのディアドラの2頭が勝っている。