宝塚記念(G1、芝2200メートル、26日=阪神)の最終追い切りが東西トレセンで行われた。「追い斬り激論」はレースの鍵を握る逃走自慢2頭をピックアップ。東京・井上力心(よしきよ)記者は春盾を制しG1連勝を狙うタイトルホルダー(牡4、栗田)、大阪・奥田隼人記者は持ち前の粘り強さを世界に知らしめたドバイターフの覇者パンサラッサ(牡5、矢作)を指名した。さあ主導権を握るのは?

    ◇    ◇    ◇  

井上 ビジネス用語では主導権のことを「イニシアチブ」と言う。

奥田 なぜ急にビジネス用語に?

井上 前職(マーケティングコンサルタント)の癖でついつい横文字を多用しちゃうのよ。今回イニシアチブを握りそうな逃げ候補はタイトルホルダー、パンサラッサの2頭。この2頭の出方がレースの鍵を握っていると言えるね。

奥田 それは同感です。美浦のタイトルホルダーの追い切りはどうでした?

井上 横山和騎手を背に美浦ウッドで5ハロン67秒7-11秒2(馬なり)。

奥田 しまいはかなりいい時計が出てますね。

井上 全く無理してないからね。道中はリズム重視で息ピッタリ。手応え十分に僚馬に並びかけると回転の速いフットワークで楽々併入。元気いっぱいで活気があるのがいいよね。

奥田 ファン投票は歴代最多得票数での1位らしいです。

井上 ホントそれに恥じない出来だと思う。鞍上は「先週もいいなと感じたが先週より走りのリズムや姿勢が良く感じました。不安なく迎えられます」と自信を深め、栗田師も「折り合い面、バランス、息遣い、コンタクトも良くすごくいい動きだった」と合格点。両者とも圧勝だった天皇賞・春以上の状態の良さを感じている。

奥田 ただ、今回は一気の距離短縮です。

井上 2000メートルの弥生賞で重賞勝ちしているし、体形的にむしろ都合が良くなる可能性もあると思う。鞍上も「今のタイトルとなら大丈夫」と。充実ぶりを感じ取り、手の内に入れているからこそ出た自信の言葉だと思う。

奥田 パンサラッサも負けてませんよ。栗東坂路で4ハロン51秒7-12秒0(馬なり)。堂々のS評価です。

井上 しかも不良で?

奥田 そうです。重い馬場に他馬が苦戦する中、涼しい顔で登坂。動きはパワフルでしたし、これなら仁川の急坂も十分こなせると思わせてくれました。矢作師も「言うことはないね。素晴らしい動きだったし状態はいいよ。ビックリするくらい」と手放しで褒めてましたから。

井上 やっぱ逃げ宣言してるのかな?

奥田 はい。師は「いずれにしても行くしかない。ごまかしがきくメンバーじゃない」と。ハイペースで後続に脚を使わせる戦法は一貫しています。

井上 対するタイトルは「逃げないといけない馬ではない。この馬のリズムで」ときっぱり。鞍上も馬とのリズムや呼吸を第一に考えていた。力みも解消した今ならパンサラッサに惑わされず自分の競馬を貫けると思うよ。ハナを切る馬が主導権を握るとイメージしがちだけど、実際は番手の馬がレースを支配してたということもあるからね。

奥田 いずれにせよドミネータ(支配する者)はどちらかですね。

井上 うつってる(笑い)。

◆宝塚記念の逃げ馬 90年以降では4勝。92年メジロパーマーは9番人気で3馬身差の快勝。98年はサイレンススズカが唯一のG1勝利となる逃走劇で1番人気に応えた。04年タップダンスシチーは1角3番手から先手を奪い佐藤哲三騎手の巧みなリードでゴールへ駆け込んだ。08年エイシンデピュティは重馬場を苦にせずハナを切りメイショウサムソンを頭差振り切った。