億超えで落札される馬が連発だった11、12日のセレクトセール、その週末に行われた「世代最初の重賞」函館2歳S(G3、芝1200メートル、16日)はノーザンファーム生産馬のブトンドール(牝、池添学)が制した。

世代1番星に輝いた同馬は20年のセレクトセール当歳セッションで2000万円(税抜き)で落札された。ノーザンファーム生産馬で、同セールではお手ごろなビッグアーサー産駒だが…。その血統背景からは競馬の面白さ、難しさが見えてくる。

ブトンドールはノーザンファーム生産馬だが、たとえば、アメリカや英国のセールで高額で買ってきた繁殖牝馬の子ではない。母プリンセスロックは浦河育成牧場の生産で、13年の北海道オータムセールでノーザンファームが120万円で落札した牝馬だ。現役時代は吉田和美オーナーの勝負服で走り、19戦3勝の成績を残している。

社台グループの馬が多く上場されるセレクトセールに対し、北海道市場で行われるセレクションセール、サマーセール、オータムセールは日高の中小牧場の生産馬が中心に上場される。落札額は目立たない。ただ、こちらのセールにも当たり前のことだが、「素晴らしい素質を持った馬」や「優秀な繁殖牝馬になる可能性を持った馬」がいる。それをノーザンファームが類いまれな生産&育成の技術で証明した函館2歳Sだった。

1番人気で8着に敗れたスプレモフレイバーもノーザンファームの生産馬で、20年セレクトセールの当歳セッションで3800万円(税抜き)で落札された馬。この馬の母キャレモンショコラも12年の北海道サマーセールでノーザンファームが480万円(税抜き)で落札している。キャレモンショコラも吉田和美オーナーの勝負服で走り、現役時に9戦4勝の成績だった。

競走馬としては比較的廉価な落札馬が優秀な繁殖牝馬になる。こういった例は他にもたくさんある。カタログにある表面上の文字や数字(成績)にとらわれず、国内外で売却される馬たち、そのすべてに目を光らせているのがノーザンファームの強さなのだろう。

今月の26、27日にはセレクションセール、来月下旬にはサマーセール、9月にはセプテンバーセール、10月にはオータムセールがある。金額的な驚きはないかもしれないが、生産者たちが懸命に育てた馬たちが上場される。各セールの結果にも注目していきたい。