野球で一番守備がうまい選手は「難しい打球を簡単なように捕る」と聞いたことがある。柴田善臣さんの騎乗が、まさにそれだった。
馬上での派手なアクションなんて見たことがない。常識外れの戦法を取ることも少ない。勝利騎手インタビューでも、負け取材でも、声の穏やかなトーンが変わらない。いわゆる「勝負師」のイメージから一番遠いところにいる人かもしれない。
それでも輝きを放ったのが善臣さんだ。よく耳にしたのは、スタートの上手さ。ある3冠騎手が言っていた。「ユタカさん(武豊騎手)、そして善臣さん。あの2人にはかなわない」。あるダートの重賞馬がいた。身体能力は圧倒的ながら、国内外の名手が騎乗してもゲートだけは出なかった。そんな馬でも、善臣さんは初コンビで逃げ切りへと導いてしまった。ただレースを見ただけでは気づかない、技術にあふれた人だった。
だから、善臣さんの勝ち方はいつも綺麗だった。とても簡単に勝っているようにも見えた。「馬乗りなんて特別なことじゃないんだよ」。サラリと言ってのける姿も本当にかっこいい、本物のプロの騎手。名人芸をありがとうございました。【14~19年中央競馬担当=柏山自夢】

