ディープインパクト産駒オーギュストロダン(牡、A・オブライエン)がG1初制覇を果たした。鞍上はライアン・ムーアで勝ちタイムは1分44秒76(不良馬場)。19年に天国へ旅立った日本の最強馬ディープインパクトのラストクロップ(産駒の最終世代)から待望のG1ウイナー誕生となった。ディープインパクト産駒のフューチュリティトロフィー勝利は17年サクソンウォリアー以来5年ぶり2度目。

フューチュリティトロフィー(旧レーシングポストトロフィー)は翌年の英愛クラシックへ向けた登竜門。過去にこのレースを制した馬は01年ハイシャパラル、04年モティヴェイター、06年オーソライズド、11年キャメロットなどが翌年、英ダービー馬に輝いている。17年サクソンウォリアー、18年マグナグレシア、19年カメコ、20年マックスウィニーと4年連続でこのレースを勝った馬が翌年の英国かアイルランドの2000ギニーを勝利、昨年覇者ルクセンブルクは今年の愛チャンピオンSを快勝している。

エイダン・オブライエン師が直前まで出否を悩むほどの不良馬場も関係なかった。道中は2つに分かれた馬群のニアサイド(スタンドに近い側)の最後方を進み、最後は2着に3馬身半差の快勝。オブライエン師は「馬場がヘビーなら走らせない予定でしたが、ライアンの感触はヘビーではなかったし、私たちもコースを歩いてみて、そう感じなかったので走らせました」と話し、「すごい素質を持っている」と絶賛した。この勝利で来年の英ダービー(G1、芝2410メートル、6月3日=エプソム)へ向け、有力候補の1頭から断然人気の存在へ。大手ブックメーカーの「パディーパワー」社は4・0倍のオッズをつけている。また、来秋の凱旋門賞(G1、芝2400メートル、10月1日=パリロンシャン)へ向けても各ブックメーカーは13~17倍程度のオッズを設定し、ヴァデニ(今年の凱旋門賞2着馬)に次ぐ2番人気となっている。

オーギュストロダンの母ロードデンドロンは16年のフィリーズマイル、17年のオペラ賞などを制したG1馬。母の1歳下の全妹は19、20年の愛チャンピオンS連覇などG1・7勝を挙げた名牝マジカルという血統。6月のデビュー戦は不利があって2着に敗れたものの、2戦目で初勝利を挙げ、前走はレパーズタウン競馬場のG2KPMGチャンピオンズ・ジュベナイルSで重賞初制覇。3連勝でG1初制覇を果たし、戦績は4戦3勝2着1回となった。

アイルランドのクールモアは偉人や景勝地、国名や都市名を馬名につけるのが通例。偉大な彫刻家の名前を与えられたディープインパクトの忘れ形見、オーギュストロダンが来年の欧州競馬の主役になる。