3月から調教師に転身する福永祐一騎手(46)が、JRAラストウイークを迎えた。来週末はサウジ遠征のため、今週土日が中央競馬でのラストライドとなる。連載「ジョッキー福永祐一と私」では2週にわたり、ゆかりの深い関係者が思い出を振り返る。

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18年に悲願のダービー初制覇を果たした福永騎手。その相棒ワグネリアンを管理していた友道康夫調教師(59)は「研究熱心」と言った。

「印象的なのはね、直近であったんだけど、うちのジャスティンスカイっていう馬がいて」。11日の洛陽Sを制したキタサンブラック産駒の4歳牡馬だ。3走前にマイルに距離短縮してから3連勝。この快進撃には名手の提言があった。

昨年秋、福永騎手との新コンビで東京の芝2400メートルを使う予定だった。だが、1週前追い切りに騎乗した鞍上から「2400メートルの馬じゃないですよ。1600メートルの方がいい」と伝えられた。その翌日に東京マイルのレース(10月16日=鷹巣山特別)はあったが、同騎手は既に阪神で騎乗することが決まっていた。「自分は乗れないけど、1600メートルを使った方がいい」。結果は、石橋騎手の手綱で後方から鮮やかに差し切る快勝だった。

師は首をかしげる。「体を見ても2000メートル以上なんだけど…」。それでもマイルが合うのはなぜか。鞍上は追い切りで、その理由をつかんでいた。「カッとなりやすいタイプだから、2000メートル以上だと集中力が続かないと祐一は言っていた」。

馬の気持ちをくんで最適な条件を選択し、好走につなげる。豊富な経験と綿密な研究がないとなせない業だ。「馬の気持ちが分かるのは、調教師になっても強みだと思う」。数年後には、名門・友道厩舎のライバルとして“福永厩舎”が立ちはだかっているのかもしれない。【下村琴葉】