21年ダービーをシャフリヤール&福永騎手で制した藤原英昭調教師(57)。福永騎手とは“師弟”ともいうべきタッグで、G1・2勝を含むJRA重賞12勝を挙げた。師は、出会いを懐かしげに振り返る。

藤原英師 僕らのアイドルでスターの福永洋一さんの息子でしたからね。調教スタンド下のうどん屋で会ったんじゃないですか。印象は「これが福永洋一さんの息子か~」というくらいでしたね(笑い)。

福永騎手は所属の北橋厩舎解散後、伸び悩んだ時期に師のもとへ足を運んだ。

藤原英師 祐一の最大の強みは、人として自分を見極めるというか、他の人をリスペクトしながら自分の立ち位置を明確に理解し、そこから行動できるところ。だから馬に乗って、やはり自分に力がないことを早い段階で認識できたことは今につながっている気はします。

北橋厩舎に師の弟・和男さんがいた縁もあり、福永騎手を招き入れた。そこで基礎から鍛え直し、2人でダービーを制すまでになった。師が思う騎手・福永祐一のすごみとは。

藤原英師 やっぱり人間性でしょうね。「三尺下がって師の影を踏まず」ということわざがありますけど、常に北橋先生や瀬戸口先生ら師匠、その中に父親もいますけど、その方々をリスペクトして、みんなに恥をかかせないように自分がしっかりやっていくんだという日常の人格的なもの。それが最初は花咲かなかったですが、晩年にきて花咲いたというのはあいつの人格が全てだと思っています。

今後は調教師同士、管理馬を競わせる関係となる。師らしく、エールを送った。

藤原英師 もう、お父さんを抜いたと、私は思っています。ダービーも3勝して、自覚を持ってムチを置いたと思うんでね。次は自分の一からのスタートということで、違う結果を求めて。あいつ自身が今度は独り立ちして、頑張ってほしいとは思います。まあライバルにならないのは確かですけどね(笑い)。競馬サークルのために表に出て、盛り上げてほしいなと。その責務があると思っていますよ。【取材・構成=奥田隼人】