今シーズンの佐々木朗希のピッチングで、一番の出来だった。これまでは体の負担を減らすこと重視。「長いイニングを投げる」や「ローテーションを守る」を考え、力をセーブして投げているように見えた。力を抜いて投げるのは悪いことではない。それでも投球フォームはフラフラと安定感を欠き、左肩の開きも早かった。しかし今回の投球は、抜くところは抜き、入れるところは入れるというメリハリがついて、投球フォームにも安定感があった。
もともと、ある程度でも自分の投球フォームで投げられれば、そう簡単に打たれる投手ではない。今試合は真っすぐでも160キロ以上をマーク。力を入れるべきところで、しっかり投げられていた。これまでは制球力を重視して力を抜いて投げると、すっぽ抜け気味の球が多く、力を入れて投げると引っかけてしまっていた。
イニングの先頭打者を8回中6個も三振で奪い、合計12個の三振のうち、3球三振が9個というのも圧巻の数字だろう。日本ハム打線がボール球を振って楽にしてくれた面はあるが、球数を減らしたいという、自分の思い描く投球ができていた証拠だ。力を抜いて投げるコツさえつかめば、力を入れたときのフォームもそれほど崩れなくなる。手応えを感じ、自分なりの収穫になったのではないか。
現時点で一番の課題だった投球フォームが安定すれば、自分の弱点というか、反省点も明確になる。走者を出したときのピッチングは、課題点ばかりが目についた。一番重要なのは、クイックが遅いこと。足を高く上げて投げるタイプで、クイックで足を上げないで投げようとしても、大きく重心を後方に残さないと投げられない。そこであまりクイックを速く投げようと意識すると、今度は上半身が突っ込み、制球力が落ちてしまう。
クイックには2通りある。投げる前に重心を後方に残しておいたまま投げられるようにする。もう1つはこれ以上、上半身が前に突っ込まないように意識しておき、左重心のまま投げるかになる。これはブルペンで練習し、どちらが自分に合うか確かめ、精度を上げていくしかない。
どうしてもクイックが苦手なら、けん制球を磨く手もある。セットからけん制を投げるとき、佐々木は一塁方向に回転してから足を止めて投げる。これではよほど走者が油断してなければ刺せない。右投手なら回転しながら一塁へ投げられるように練習してほしい。それでもできないなら、せめて目で走者をけん制してほしい。4回1死から三盗を決められたが、目でけん制していれば、あれだけ簡単にスタートは切られなかったと思う。
1点を失った7回まで球数は98球。これで終わるかな、とも思ったが8回も投げて3者凡退に切り抜け、106球で8回を投げきった。残念ながら勝ち負けは付かなかったが、これぐらいのイニングを投げてローテーションを守ってくれれば、誰もが納得する。そしてその力が佐々木にはある。次回の登板も期待したい。(日刊スポーツ評論家)




