8730キロ離れた異国の地で、日本馬パンサラッサ(牡6、矢作)が快挙を成し遂げた。1着賞金13億円という世界最高賞金レースを逃げ切りで勝利。世界の競馬史に名を刻んだ。

海外G1で史上最多となる日本馬6頭が挑戦。“チームJAPAN”の力も受けて、昨年のドバイワールドC覇者カントリーグラマーなど世界の強豪を退けた。

最内枠から抜群のスタートを決めた。吉田豊騎手はこの日、この1鞍のみ。全神経を集中し、包まれるリスクもあった1番ゲートを追い風に変えた。矢作師も「スタートが決まったことが大きな勝因だった」と振り返った。

道中はジオグリフが2番手を追走。クラウンプライド、カフェファラオも好位から伸びて、直線半ばでは日本勢の掲示板独占かと思われた。最後は、ダートの本場・米国から参戦したカントリーグラマーが大外から強襲したが、パンサラッサがしのぎきった。

吉田豊騎手は「スタートが決まって、そこからは安心してパンサラッサの競馬をしようと。大満足です。最後は何か後ろから来ているのは分かっていたが、いつも二枚腰を使ってくれる馬。何とかしのいでくれと思っていた。(この勝利は)忘れられないレース。騎手をやってて良かったなと思う」と話した。

昨年のサウジCデーでも日本馬は旋風を巻き起こした。ネオムターフCをオーソリティが制して幸先のいいスタートを切ると、続く1351ターフスプリントをソングラインが、レッドシーターフHをステイフーリッシュが勝利して日本馬が3連勝。その後、リヤドダートスプリントをダンシングプリンスが勝ち、チームJAPANが1日にして海外重賞4勝の快挙を成し遂げた。

ただ、メインのサウジCでは、パンサラッサの僚馬マルシュロレーヌが6着、テーオーケインズが8着。日本馬は20年から3年連続で計5頭が挑戦したが、高く厚い世界の壁にはね返されていた。

そんな中でつかんだ念願の勝利。「世界のYAHAGI」がまた1つ、快挙を成し遂げた。矢作師は「とても世の中でこんなことが起きるとは信じられない。アンビリーバボーです。馬とスタッフを誇りに思います」と話した。この日はバスラットレオンで1351ターフスプリントも制しており、昨年のステイフーリッシュに続くサウジでの勝利となった。

パンサラッサは昨年のドバイターフ以来のG1・2勝目。昨秋の天皇賞・秋(2着)では大逃げでわかせるなど、個性派として人気を博してきたが、今度はわずか2度目のダートで世界最高賞金レースを制覇した。今後は“世界一”の馬として、世界の強豪を迎え撃つ立場となる。次走について矢作師は「オーナーと相談ですが、ドバイワールドC(G1、ダート2000メートル、3月26日=メイダン)の可能性もあります」とした。