3月から調教師に転身する福永祐一騎手(46)が25日、サウジアラビアでラストライドを終えた。2鞍に騎乗し、勝利はならなかったが、同行した翠夫人は最後まで献身的に見守った。

福永騎手の最終騎乗を見届けた翠夫人は、涙ぐみながら「終わっちゃったね…」と寂しげな表情を浮かべた。

結婚前から10年以上、騎手・福永祐一をすぐそばでサポートしてきた。レース数時間前から「もうすぐだね。どうしよう」と緊張は高まった。そして始まった最後のレース。その瞳からは涙が止まらなかった。

「スタートからゴールまでずっと泣いていました。1年分くらい泣いたから、もう泣かないよ。前を向かないと。でも、ゲートに入る瞬間は『入らないで』と思っちゃった。だって、入ったら終わっちゃうから…」

騎手としての最後の瞬間に立ち会うため、サウジアラビアに同行した。「その瞬間は1度しかないから。楽しまないと」。それでもレース前日はプレッシャーで「歯が抜ける夢を何度も見た。噛みしめていたからかな(笑い)」。

ただ、当日の朝はお互いに「今までありがとう」と感謝の言葉が自然に出た。

「私たちのどちらかだけでは見られない夢を見せてくれるよね、競馬って」

競馬がお互いにかけがえのないものであることを再認識できた。

たくさんの思い出がある。ただ、調教師になると聞いてからはあっという間だった。次のステージへ向けて、翠夫人も前を向く。

「馬柱の騎手の欄から福永の名前が消えてしまうのはさみしいけど…。調教師になったら、より深く馬に関われると本人も楽しみにしているし、存分にやったらいいよね。帰ったらまずはお疲れ様、そしてありがとうと言いたいです」

3月からは福永調教師との歩みが始まる。「騎手の妻は引退し、今後は調教師の妻として一緒に歩んでいきたいです」。福永夫妻の物語は第2章を迎える。