“超回復”で頂点へ。秋G1開幕戦のスプリンターズS(芝1200メートル、10月1日=中山)の最終追い切りが27日、東西トレセンで行われた。今秋も日刊スポーツでは「追い切りの番人」で有力馬の調教を深掘りする。今回は大阪本紙の太田尚樹記者が、重賞4勝馬ナムラクレア(牝4、長谷川)をチェック。5着だった昨年と比較して、少女から大人になった成長過程を探った。

あれから1年で、少女は大人になった。諸説はあるが、3歳馬が女子高生なら4歳馬は成人女性。昨年と今年のナムラクレアを見比べると、より小顔になった印象を受ける。体重は大差ないが、筋肉のめりはりが増してボリュームアップしたように映るからだろう。

注目したのは見えない進化だ。それは回復力。昨年が北九州記念(3着)から中5週だったのに対し、今年はキーンランドC(1着)から中4週で挑む。間隔が短くなったにもかかわらず、1年前と同じくレース22日前から調教時計を出し始めた。担当する疋田厩務員に聞くと「札幌が暑かったのも、得意でない(重い)馬場だったのも誤算だったけど、回復が思った以上。(レース後)10日ぐらいで十分に回復して肌つやも良くなった。トモにももう1段、張りが出た」と証言。これぞ超回復だろう。

しかも、今年に入ってからは、坂路(全長1085メートル)だけでなくCウッド(1周1800メートル)での追い切りを併用して、より負荷の強い調教を積んできた。浜中騎手いわく「ゴール前で甘くなるところがあった」という弱点を克服するため、5着に敗れた昨年のレース後に厩舎と協議して、調教強化に踏み切った。今回も先週21日にCウッドで6ハロン81秒8-11秒3の好時計を出した。

最高評価「S」を獲得した最終追い切りも絶好だった。四肢に巻かれた白いバンデージを高速で回転させ、坂路4ハロン53秒4-11秒7と加速。またがった長谷川師も「気負うことなく、緩急がついて非常に良かった。芯の入った走り方。これならいい状態で向かえる」と声を弾ませた。

回復力が高まったからこそ、密度の濃い調教を重ねて昨年以上の出来に仕上げることができた。ちなみに、馬房ではカメラを向けるとピタッと止まってポーズを決め、プロ意識の高いモデルを思わせる。競走馬として最高の“ランウェー”で、成熟した身のこなしを見せてくれそうだ。【太田尚樹】