「競馬の神様がくれた最上のプレゼント」-。絶対女王リバティアイランド(中内田)が史上7頭目の牝馬3冠制覇を果たした。中団前方から4コーナーで仕掛けて危なげなく抜け出した。

この日が誕生日だった川田将雅騎手(38)は3歳G1完全Vも達成。今後は未定だが、現役最強の座も視界に入ってきた。

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その首筋に左から3本の指が添えられた。後光のように西日を背負い、絶対女王リバティアイランドが淀に君臨した。直線入り口で先頭。頭上の赤と黄の飾りを激しく揺らし、後続を置き去りにした。誰の抵抗も許さない。隙のない完勝で3冠を達成した。祝福の喝采に包まれた川田騎手は、切れ長の目を潤ませた。

「心から感動しています。騎手生活20年目で競馬の神様が与えてくれた最上のプレゼントだと思います」

38歳の誕生日を完璧な仕事で祝った。あの時の自分とは違う。忘れじの名牝ハープスターと挑んだ14年の凱旋門賞。直前のジョッキールームでは心臓が早鐘を打ち「人生で一番緊張した」。それから9年。単勝1・1倍の重圧にも動じなかった。胸にあったのは愛馬への信頼だけだ。

「絶対的な自信が彼女に対してありますので。『彼女らしく走りさえすれば』という思いだけで仕事をすれば何の問題もないと」

かつての女王たちが苦しめられた京都2000メートル内回りも怖くはなかった。内寄りの6番枠から向正面で外へ。4コーナーの大外をまくるように動いた。

「直線に向けては、とにかく進路をつくることだけでした。ペースも緩かったですし彼女も行く気になりましたので、このまま強気に押し切ってしまおうと」

昨夏のデビュー前週の調教で得た予感は、史上7頭目の快挙として結実した。G1・4連勝。次走は未定だが、今後は古馬や牡馬との戦いが始まる。

「追い切りに乗りながら『もっと良くなれるな』という部分もあります。今日の返し馬でも感じました。まだ『お姉さん』にはなれていませんね」

天から授かった「お嬢さん」はどこまで強くなるのか。今や世界で名をはせる豪腕にも、まだまだ限界が見えない。【太田尚樹】

◆リバティアイランド ▽父 ドゥラメンテ▽母 ヤンキーローズ(オールアメリカン)▽牝3▽馬主 (有)サンデーレーシング▽調教師 中内田充正(栗東)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 6戦5勝▽総収得賞金 5億4333万6000円▽主な勝ち鞍 22年阪神JF(G1)、23年桜花賞(G1)、オークス(G1)▽馬名の由来 米、アッパーニューヨーク湾の自由の女神像が建っている島