とんでもない掘り出しものが潜んでいるかもしれません。「ノーザンファームミックスセール2023」が24日に北海道苫小牧市のノーザンホースパークで行われます。21年までの繁殖牝馬セリが昨年改称され、当歳馬と繁殖牝馬のセリが同日に開催されることになりました。昨年、新たに設けられた当歳馬セッションは上場38頭に全て値がつき、合計落札額18億9300万円(税抜き)、平均落札額4981万5789円と上々の滑り出しでした。
個人的展望ではありますが、今年の平均落札額は昨年の記録を更新すると踏んでいます。昨年、最高額を付けた馬は22年ダービー馬ドウデュースの半弟ダストアンドダイヤモンズの22(牡、父リアルスティール)で、8600万円でした。馬主、調教師たちが「セレクトセールに出てたら2億円はいくんじゃないか」と、セリの前後で話してくれたことが興味深いと感じていました。
セリ前の下見時期は馬がぬいぐるみのようにモコモコの冬毛をまとい始める時期でもあり、当歳馬の離乳のタイミングも重なります。昨年、現地でセリを取材した際、この時期はたった数日間だけでも馬の見た目、馬体のバランスが違って見えると牧場関係者から聞きました。毎年7月に行われるセレクトセールは今年で26回目の開催でした。セリが回を重ねるごとで購買希望者の目が肥え、馬体の成長イメージを思い描くことができますが、この時期は馬を見るプロたちですら、善しあしの判別をつけにくいといいます。
今年が2回目のミックスセールであれば、デビュー馬のセリ時点での見栄えを基にした成功パターンはまだありません。突き抜けた値段をつけることはないでしょうが、お得感から活発なセリが展開されるでしょう。今年のセレクトセールの当歳部門を振り返ると、ノーザンファーム((有)ノーザンレーシング名義、吉田俊介氏名義含む)の生産馬は90頭(うち欠場4頭)が上場され、平均落札額は1億円目前の9679万円でした。有力バイヤーによる争奪戦が金額高騰の一因であるにせよ、昨年のミックスセールのほぼ2倍です。先述のドウデュースの半弟がセリにしては安価で落札されたことを思えば、注目度は昨年より確実に上がっているはずです。
馬の活躍はふたを開けてみなければわかりません。例えば、菊花賞馬ドゥレッツァの血統です。繁殖牝馬部門に話が飛びますが、母モアザンセイクリッドは昨年、父ブリックスアンドモルタルを受胎した状態ながら、わずか850万円で落札されています。もし、この馬が今年のミックスセールに出ていたら…。産駒、きょうだい等の活躍が相対的にデビュー前の馬の評価を上げることにつながるのが、セリの世界でもあります。
今年の当歳上場馬は44頭。シーヴの23(牡、父コントレイル)のように、最近までセレクトセールで高値取引が続いた母馬の子がこちらに登場していたり、注目の初子なども多くが登壇します。マースの23(牝、父コントレイル)は母も米G1勝ち馬で初子の半兄サークルオブジョイ(牡2、池添)が新馬勝ち、アウェイクの23(牝、父モーリス)も2歳上の兄で昨年のセレクトセール1歳部門で2億5000万円もの値がついたインビジブルセルフ(牡2、池江)が新馬勝ちするなど、現役のきょうだいが成績を出しはじめた馬なども出てきます。
自分は今年も成田空港からLCCに飛び乗って、北海道入りしました。セール初の億超えが見られるかもしれませんし、寒さ(24日の最低気温はマイナス1度!)を吹き飛ばす熱くて活発なセリを楽しみつつ、取材に励みたいと思います。【松田直樹】