JRA・G1初挑戦初勝利を飾ったブレイディヴェーグ(牝3)を管理する宮田敬介調教師(43)はJRAのG1・6度目の挑戦で初制覇を果たした。

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開業4年目でのJRA・G1制覇の裏には挫折があった。麻布大獣医学部卒業後にノーザンファームへ就職。約2年の勤務をへて競馬学校へ入学し、06年から栗田博憲元調教師の下で調教厩務員となった。担当馬がすぐに勝利を収めたが、その後1年ほど白星から遠ざかった。

「当時は自分が馬に乗って、その馬を成長させてあげられているという実感が全くなかったです」

師へ「馬から降りたい」と直訴。約1年半ほど馬にまたがらなかった。担当馬の世話に徹し、調教は同僚に任せた。自身はスタンドから馬を眺める日々が続いた。

「昔から馬が好きで自信もありました。だけどトレセンに入ってみたらそんな甘い世界じゃなかったですね」。

心がポキッと折れかけた。

悩みが深まった08年のある日、原点に戻った。以前勤務していたノーザンファームを訪れると、元同僚の表情に心を揺さぶられた。

「重賞、G1を勝つぞ、とみんな目をキラキラさせながら育成馬に乗っていた。トレセンに来て3年たって、打ちひしがれている今の僕は随分差が開いちゃったなと」。

目が覚めた。

「ここまで落ちたし、もう失うものはない、マイナスからもう1回トライしようと吹っ切れましたね」。

JRAの乗馬施設に通って馬乗りの感覚を取り戻し、栗田元師に「もう1度、馬に乗せてください」と願い出た。スタンドに入り浸った頃に学んだ他厩舎の調教も参考に、精を出した。

その後田島俊明師、国枝栄師の下で鍛錬を重ね、18年に7度目の調教師試験で合格。

「ここまで出会った方々のおかげで今の僕がいるので本当に感謝しかないです」

デビュー前のディープインパクト、アーモンドアイの背中を知る宮田師が、途切れかけた夢を紡いだ周囲への思いを、最高の結果で示した。【桑原幹久】