小さくてかわいい“ちいかわ”メロディーレーン(牝8、森田)は、競馬界屈指の人気者だ。写真集やカレンダーも発売され、SNSに動画を投稿すると何千もの「いいね」がつく。

そんなアイドルホースが先週6日、進退をかけたレースに臨んだ。

5歳秋の古都Sを最後に2年以上も勝利から遠ざかったまま8歳を迎えていた。昨年は4戦して1度も掲示板に載れていなかった。年末には2歳下の半弟タイトルホルダーも引退したばかりだった。

そうした中で挑んだ今年初戦の万葉S。馬群に入ると見えなくなりそうな358キロの体を目いっぱいに伸ばして、3着に食い込んだ。SNSでは「感動しました」などと称賛する声が相次いだ。

森田直行調教師(62)が驚いたのは、激走直後の愛馬の様子だ。

「今までで一番、息があがってなかった。3000メートルを走ったのに、坂路(800メートル)を上がった後ぐらい、しんどくなさそうやった。あんな馬はいない。衰えるどころか、まだまだ成長しているのかも」

僕(太田)もちょうどレース後の検量室前で動画を撮っていたが、たしかに呼吸は乱れていなかった。興奮気味に首を振っていたのは走り足りなかったから…とみるのは思い過ごしかもしれないが。

そんなレース内容を踏まえ、現役続行が決まった。次走は阪神大賞典(G2、芝3000メートル、3月17日)と発表された。いつ引退してもおかしくない年齢だが、森田師は「(オーナーの)岡田牧雄さんも『ファンが喜んでくれるなら走らせたい』とおっしゃっていた。体の張りも良かったし、8歳ながらトモの筋肉もすごかった」と充実ぶりを証言する。

ちなみに、年始の3日間開催に出走した1077頭の平均体重は477・6キロだった。それより100キロ以上も小さな馬体で、8歳にして一線級を相手に戦う。もはや常識を超越している。

同じく型破りだった父オルフェーヴルを番記者として取材しただけに、個人的にも目が離せない存在だ。まず何よりも無事を願いつつ、今なお成長中という走りをこれからも見守っていきたい。【太田尚樹】