ルーキーたちが新風を巻き起こす。

明日2日、東西で8人の新人騎手がデビューする。中山では現役7人目のJRA女性ジョッキーとして、大江原哲元調教師の孫、大江原比呂騎手(19=武市)が土日で計9鞍に騎乗。うち特別競走にも2鞍騎乗する。

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まだあどけない19歳が、負けん気を隠さなかった。デビューを直前に控えた大江原比騎手は「土曜に競馬場に行くと緊張すると思いますが、今は楽しみだなという気持ちです」と初々しい。一転、柔らかな表情を引き締め「関東もそうですが、関西の同期には負けたくないですね」と言葉に力を込めた。

強固な意志で道を切り開いた。騎手、調教師など競馬一家に生まれたが、年長から器械体操を習い、幼心に将来は体操選手を夢見た。転機は小学5年。友人に誘われ、乗馬を始めた。

「正直あんまり覚えていないですが、両親から『乗馬をやるなら騎手にはならない』という約束をしたそうです」

運命の出会いは中学1年。藤田菜七子騎手の活躍に心を奪われ、行動に出た。両親に内緒で騎手志望の子どもたちが集まる「競馬学校ジュニアチーム」に応募した。

「騎手は男の方が多いので考えていませんでしたが、藤田菜七子騎手を見て女性でもなれるんだなと。両親に怒られなかったですけど『応募したの?』と驚かれて『やりたいならいいよ』と言ってくれました」

平均台の上で養った体幹を生かし、スタートラインに立った。祖父がマネジャーを務める馬主所有のタイガードラゴンなど、多くの縁で戦場に出る。「乗せてくださる方々に感謝の気持ちを忘れずに、新人賞を目指して1鞍1鞍大切に乗りたいなと思います」。色紙に記した「日々感謝」を胸に、大海原へ飛び込む。【桑原幹久】

◆大江原比呂(おおえはら・ひろ)2004年(平16)8月17日、茨城県生まれ。小学5年から乗馬を始め、藤田菜七子騎手の活躍から騎手を志す。中学時代は競馬学校のジュニアチームに所属。目標の騎手は内田博幸騎手。趣味は釣り、音楽鑑賞。祖父哲は元騎手で元調教師、父勝は蛯名正厩舎で現調教助手、父のいとこ圭は現騎手。身長155.2センチ、体重48.2キロ。

▼大江原哲元調教師(孫の比呂騎手のデビューに) 楽しみだよね。心配はしていないです。周りに信頼できる先輩がたくさんいるので、いろいろと混乱しないように、僕から馬乗りについて教えることはないです。縁のある馬で初勝利ができたらうれしいね。