「スポーツで最も偉大な2分間」。米国3冠競走の初戦ケンタッキーダービー(G1、ダート2000メートル、チャーチルダウンズ)が5日、午前7時57分に発走する(現地4日)。今年は日本馬が優勝候補の1頭。デビュー5戦無敗のフォーエバーヤング(牡3)に大きな期待が集まっている。矢作芳人調教師(63)と坂井瑠星騎手(26)の師弟コンビで、所有はサイバーエージェント代表の藤田晋氏(50)。もう1頭、2連勝中のテーオーパスワード(牡3、高柳大)もカナダで活躍する日本人騎手、木村和士(24)と歴史的勝利を狙う。

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世界最大の馬産地、米ケンタッキー州で行われる3冠競走の初戦、ケンタッキーダービーで日本馬が歴史的な勝利を挙げるときがきた。フォーエバーヤング。2歳時に全日本2歳優駿を制し、今年はサウジダービー、UAEダービーを制した5戦無敗の日本馬は3番人気の評価を受け、3歳世代のダート世界最強をかけた一戦に臨む。

欧州を模範に芝をメインに行ってきた日本競馬。欧州の凱旋門賞は2着4回とあと1歩なのに対し、ダートの本場・米国、特に3歳世代の頂点を決めるケンタッキーダービー制覇は「絶対に不可能」と言われる時代が続いた。初挑戦の95年スキーキャプテンから16年ラニまで20年間、挑戦すらなかったが、21年に矢作厩舎マルシュロレーヌが日本調教馬として初めて米国ダートG1(BCディスタフ)を制し、昨年はパンサラッサがサウジC、ウシュバテソーロがドバイワールドC制覇。ダートで米国馬と互角に戦う時代となり、機は熟した。

フォーエバーヤングを管理する矢作師は開成高校卒業という異色の経歴。3冠馬コントレイルを管理し、ドバイ、香港、米国、オーストラリア、サウジアラビアなど世界中でビッグレースを制してきた。色とりどりのハットやキャップをかぶり、「帽子の男」として世界の競馬関係者に知らぬ者はいない。馬主の藤田晋氏はサイバーエージェントの代表として知られ、子会社が「ウマ娘」で大ヒット。オーナー歴は3年に満たないが、豊富な資金力と強運でスーパーホースを手に入れた。

日本競馬を変えた大種牡馬サンデーサイレンスは89年の勝ち馬。ケンタッキーダービー制覇は米国のすべてのホースマンの夢だ。待ち受けるライバルはフロリダダービーで13馬身半差をつけた怪物フィアースネス、ブルーグラスSを制した良血シエラレオーネ(フォーエバーヤングとはいとこの関係)、昨年覇者メイジの全弟ドーノックなど。それでも矢作師はフォーエバーヤングの能力に絶大な信頼を置く。「簡単なことではない。ただ、勝つことだけを考えてやっています」。

馬場入場時には場内全員で「マイオールドケンタッキーホーム」(フライドチキンのCMで有名)を合唱し、勝者にはバラの首飾りがかけられる。JRAでは海外馬券発売が行われ、グリーンチャンネルで生中継される(無料放送)。日本からは伏竜S覇者テーオーパスワードも参戦。今年は競馬史に残る「偉大な2分間」になるかもしれない。

■過去のダービー馬 64年覇者ノーザンダンサーは世界の大種牡馬になった。73年セクレタリアトは映画化。89年のサンデーサイレンスは輸入され、日本競馬を世界レベルに引きあげた。00年は関口房朗氏がフサイチペガサスで日本人馬主として初V。

■あれこれ 昨年の競馬場入場人員は15万335人(日本ダービーは同7万1868人)。米国の放送局「NBC」の中継は1480万人が見たとされ、昨年5月時点で同年のスーパーボウル(NFL)に次ぐ視聴者数。ちなみにゴルフのマスターズの視聴者数は昨年最終日平均で1205万8000人(CBS発表)。他のビッグイベントに負けない注目度を誇る。