落馬事故で10日に死去した藤岡康太騎手(享年35)へ。兄・佑介騎手が13日、阪神競馬場で思いを語った。普段通りの表情で取材陣の前に立ち、1人1人の目を見て胸の内を話した。

「昨日(12日)、無事に家族で見送ることができました。少しずつですが、僕も含め家族も気持ちの整理がついてきてます。時間はかかると思いますけど、前を向いていけるかなと思っているところです」

突然訪れた弟との別れ。計り知れない悲しみのなか、気丈に振る舞い、この日は2鞍に騎乗した。

「気持ち的に落ち着かなかったら競馬に乗るのも失礼だなと思いましたが、生前から康太とは、一緒に乗っている以上は、こういうこともありうるとよく話をしていましたし、家族よりも受け入れるのは早かったかなと思います」

1R前のウイナーズサークルでは、事故のあったダートコースの3コーナーを向いて、黙とうが行われた。中には涙を流す騎手の姿もあった。そんな騎手仲間への思いも、佑介騎手は目を潤ませながら言葉にした。

「お別れできないまま逝ってしまったと心を痛めてくださっているジョッキーもたくさんいて、今朝、(武豊)会長の方から『みんなに声をかけてあげてほしい』ということで、あいさつをさせてもらって、気持ちを伝えることはできました。なかなかすぐにとはいかないと思いますが、1日でも早く、騎手会らしい明るい空気が戻り、安心して康太が見守れるようになればなと思っています」

取材の最後は「他は大丈夫ですか? ありがとうございました」と優しい、佑介騎手らしい言葉で締めくくった。短い言葉だったが、そこには弟への愛、そしてリスペクトが込められていた。【藤本真育】