「菱田ロイヤル」が悲願達成だ! テーオーロイヤル(牡6、岡田)が1番人気に応えて、芝長距離界の頂点に立った。デビュー13年目の鞍上・菱田裕二騎手(31=岡田)、師匠の岡田稲男調教師(63)も開業22年目でJRA・G1初制覇となった。

今後は、オーストラリアのG1・メルボルンC(芝3200メートル、11月5日=フレミントン)を視野に入れる。

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大きな瞳を涙で潤ませた。デビュー13年目、30回目のG1挑戦でつかんだ格別の勝利。菱田騎手は、師匠の岡田師、厩舎スタッフと抱き合い、愛馬テーオーロイヤルを愛撫(あいぶ)して喜びを爆発させた。「よっしゃ。やっと勝てた。今まで生きてきた中で一番うれしいです。皆さんにありがとうと言いたいです」。自然と喜びと感謝の言葉があふれていた。

「ゾワッ」とする、鳥肌もののパフォーマンスだった。好位で折り合いをつけ、2周目の3コーナー下りから進出開始。「馬のリズムにまかせて、上がっていきました」。ライバル勢が懸命に追うなか、ロイヤルの手綱は全く動くことなく、馬なりで他馬をかわしていった。「すごい馬ですね。4コーナーではまだ余力があって『20年前、ここに見に来ていた自分に見といてくれよ』と思いながら追っていました」。騎手を志した11歳の自分に「ありがとう」と感謝しながら他馬を完封した。

悲願達成には感謝してもしきれない父親の後押しがあった。17年前。公務員だった父壽男さんは、騎手になることを反対していた。「ケガのリスクもありますし、不安定な仕事はどうなんだろうと思っていたと思います。でも、最後は背中を押してくれて。今ではすごく応援してくれてます。めちゃくちゃ大きな存在です」。デビューしてからは毎年、夏に滞在する函館まで応援に来てくれる。この日も、ウイナーズサークル前には、満面の笑みを浮かべた74歳の姿が見えた。何年も前から「早くG1を勝ちたいです」と言い続け、願い続けてきたのも年が離れている父のため。最高のプレゼントができた。

ロイヤルとの共闘は続く。その視界は海を越え、オーストラリアのメルボルンCが入る。「まだ伸びしろはあると思うし、本当に偉い馬。これから人馬ともに成長してくれれば」と、師匠の岡田師もうなずいた。世界最強の長距離王へ。“菱田ロイヤル”は、これからも多くの感謝を胸に夢を追いかけていく。【藤本真育】

◆テーオーロイヤル ▽父 リオンディーズ▽母 メイショウオウヒ(マンハッタンカフェ)▽牡6▽馬主 小笹公也▽調教師 岡田稲男(栗東)▽生産者 三嶋牧場(北海道浦河町)▽戦績 18戦8勝▽総獲得賞金 5億1826万6000円▽主な勝ち鞍 22、24年ダイヤモンドS(G3)、24年阪神大賞典(G2)▽馬名の由来 冠名+王にふさわしい