米3冠の初戦、ケンタッキーダービー(G1、ダート2000メートル、現地4日=チャーチルダウンズ)に、今年は日本調教馬2頭が挑戦する。連載「侍ホースマン in USA」では日本陣営の思いに迫る。第1回はフォーエバーヤング(牡3、矢作)を送り出す矢作芳人調教師(63)。海外G1・8勝を挙げる「世界のYAHAGI」もアメリカ競馬最高峰の一戦にはひと味違う思いを抱く。

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「世界のYAHAGI」がこれまでに制した海外G1は8つ。米国でも21年に、マルシュロレーヌとラヴズオンリーユーでブリーダーズCを2勝した。そんな矢作師でも、ケンタッキーダービーへの思いはひと味違う。

矢作師 なんていったってアメリカ最大のスポーツイベントなのでね。現地では「スポーツの中で最も偉大な2分間」と呼ばれているように、やはり特別なレース。気持ちもBCの時とは、ひと桁も、ふた桁も違う。そのようなワクワク感はあります。

送り出すフォーエバーヤングは昨年、デビュー3連勝で全日本2歳優駿を制覇。今年はサウジダービー、UAEダービーと2カ国のダービーを連勝した。5戦5勝。すでに世界レベルの力を示している。今年から国内でもダート3冠が創設されたが、師の視線は世界へ。そこには大きな期待が込められている。

矢作師 3冠というレベルで収まらない、もうワンランク上の馬だと思っています。総合力が高く、どんな競馬でも勝ってくれる。勝負根性もあります。ただ、キックバックを嫌がったり、課題はあります。そこらへんが今回も鍵になってくると思います。

海外での連戦による「仕上げの難しさ」も越えるべきハードルだ。4月10日にドバイを出発し、チャーチルダウンズ競馬場に到着したのは13日。本番に向けてピッチを上げるが、師も調整の難しさを実感する。

矢作師 (調整は)大変です。競馬までにどれだけいい状態で持って行けるか。今はそれだけを考えています。そのために1週前追い切りに瑠星(坂井騎手)を行かせました。その1週前追い切りでどこまで状態を上げられるかです。

今年で150回目という米伝統の一戦。21年にラヴズオンリーユーでエクリプス賞(米国競馬の年度代表表彰)を取り「海外では有名だからな(笑い)」と話すように、米国でも名声を上げた。それゆえ国内外から多くの視線が注がれる。

矢作師 注目度とともに、それだけのアウェー感を感じるが、それで燃える人間なんでね。調整の難しさはあるけど、いい状態でレースを迎えられるようにやるだけです。

今年も世界のYAHAGIが大仕事をやってのけるはずだ。【藤本真育】