今月限りで現役引退する石神深一(43=美浦・フリー)騎手は、家族に感謝する。引退を決意したのは3月上旬。その意思を妻に告げた際、翻意をうながされた。

「昔もあったんですよ。僕が障害に乗るようになる前に、平地で勝ち鞍がない時があって。嫁に『やめようかな』と話をしたら、『いや、まだやったほうがいいよ』と」

その後、障害レースに騎乗するようになり、やがてオジュウチョウサンなどの名ジャンパーと巡り合った。それはあのとき、引退することを妻が引き留めてくれたからこそだ。だけど今回、決意は変わらなかった。

「嫁に言われても、『よし、もう1度頑張ろう』とはならなかった。それは年齢的なものもあるし、けがの後遺症がまったくないわけでもないので」

今後は、柄崎将寿厩舎の助手として馬に乗り続ける。同い年である柄崎調教師とは5歳の頃からの長い付き合い。小学5年のとき、同じタイミングで乗馬を始めた。気心知れた親友の片腕となって、競馬と関わり続ける。

「やっぱり騎手は表舞台で目立つ職業だけれど、それは厩舎スタッフがいるからこそ輝ける。自分が調教した馬に乗ったジョッキーが活躍してくれたら、それもまたやりがいがあると思う」

引退を告げたとき、息子たちはどんな様子だったのか。騎手である長男・深道(20)の反応について聞くと「『うーん』って感じだったかな。まあ、うすうす感じていたのかもしれないですが」とほほ笑む。

競馬学校騎手課程に入学したばかりの次男・龍貴(17)には「直接は言っていない」という。

「伝える機会を失ってしまったというか…。入学前に僕のことで、ガタガタした心理状態にさせたくないと思って。入学したら連絡は取れない。基本的にスマホが断絶されている場所で生活しているので。だから引退発表のあった翌朝に新聞を読んで驚いたか、あるいは(教官の)武士沢さんに教えてもらったかな」

そう遠くない将来、父が稽古をつけた馬に息子たちが騎乗し、白星を届ける日が来るはずだ。【奥岡幹浩】

◆18日に引退式 中山のラスト騎乗だった18日の最終レース後に引退式が行われた。25、26日は京都で障害競走が組まれている。