伊豆1泊サイクリングの最終日。初日の2月21日は神奈川県央の自宅から海沿いを走ってまずは河津へ(その1)。強風が吹き荒れる中、早咲きの桜を堪能した後は天城を越え湯ケ島までトータル165・5キロを走り1泊した(その2)。この日はいよいよ念願だった西伊豆スカイラインを走る。


今回の湯ケ島温泉郷から熱海までのコース
今回の湯ケ島温泉郷から熱海までのコース

湯ケ島に到着した前夜は静かな宿で狩野川のせせらぎを聞きながらビールで喉を潤し、心地よい疲れもあってぐっすり眠った。翌朝起きると、せせらぎに混じり「ピューピュー」と音がする。いやな予感。外を見ると木々の枝が揺れている。あ~ぁ、今日も風と戦うのか。


午前7時に朝食をがっつりといただき、同8時ごろに宿を出発した。この日のルートは簡単。宿の前の道を上って行けば風早峠にたどり着く。


走り出すとすぐに湯ケ島温泉郷。川端康成が「伊豆の踊子」を執筆したという湯本館を過ぎ、狩野川を渡る。このあたりから伊東西伊豆線(県道59号)。この道は風早峠、仁科峠をつなぎ西伊豆の海岸線まで続く。


序盤のこう配は緩やか。だが強い西風が吹き続けており、こう配以上のきつさを感じる。平行して流れているのは狩野川支流の猫越川(ねっこがわ)。癒されるような渓谷美が目に飛び込んでくる。車もほとんど通らず、快適なサイクリングが続く。


宿の朝食
宿の朝食

風早峠へ向けて県道59号を上り始める
風早峠へ向けて県道59号を上り始める

朝日を浴び、のどかな川沿いの県道を走る
朝日を浴び、のどかな川沿いの県道を走る

気がつけば川の名が持越川と変わっていた。走り始めて10キロほどの地点にその持越川起点の標識。そしてこのあたりから路肩に雪がちらほら見えるようになってきた。ここまでの平均こう配は4%弱(Ride With GPSによる。以下同様)だが、この先からきつくなる。


ほぼまっすぐな道が続いていたが、やがて平行していた川が消えたと思ったらクネクネとした峠道が現れた。やはり楽はさせてくれない。持越川起点から峠道を抜けるまでの3キロは平均こう配が8・0%だった。


上るにつれて周囲の木々が減ってきた。遮るものがなくなって視界が広がり、空が近づいてきた気がした。あと300メートルで突き当たりの標識が見えた。もうすぐだ。路肩に雪が残る道を息づかいも荒く上っていく。


上りきった突き当たりが標高770メートルの風早峠。眼下に駿河湾が見渡せる絶景が広がるのだが、周囲に何もない吹きさらしのため吹き付ける風が半端ではない。ベンチに立てかけた自転車も吹き飛ばされそうで怖いので早々に退散し、仁科峠に向かう。


「持越川の起点」とある。路肩に雪が見え始める
「持越川の起点」とある。路肩に雪が見え始める

風早峠手前
風早峠手前

風早峠
風早峠

突き当たりを左折し県道59号を走る。風早峠から仁科峠まではほんの1・5キロだが、こう配は10%。おまけに強烈な向かい風。まったく進まない。


宿を出発して約2時間。約15キロ、平均こう配5・7%の道をひたすら上り続け、ようやく標高900メートルの仁科峠にたどり着いた。


だいたい峠の周囲は木に囲まれ眺望は臨めない所が多いが、この仁科峠は周囲が熊笹に囲まれているため遙か彼方まで見渡すことができる。伊豆で最も美しい峠と呼ばれているが、上りきった所から見下ろした峠自体も感動的な眺めだった。


手前に黄金崎や宇久須港、その向うに駿河湾や富士山、南アルプス連峰が臨めるという展望台へは徒歩で上る。ここまで来たんだからとSPDシューズで上り始めたが、途中で道全体に雪が積もって通せんぼしていたため、泣く泣く引き返した。


仁科峠
仁科峠

仁科峠
仁科峠

仁科峠
仁科峠

仁科峠展望台への道は雪に阻まれた
仁科峠展望台への道は雪に阻まれた

さて、ここからはお待ちかねのダウンヒル。いったん風早峠まで一気に下り、少し上った後、また船原峠(土肥峠)まで上りを少し交えながら下っていく。強風が常に吹き、たまに突風となって襲ってくるのでノーブレーキのダウンヒルとはいかない。慎重に慎重に下って行く。


船原峠は西伊豆スカイラインの起点だが、なぜかその姿も見ないまま県道411号との分岐を過ぎると道は上り始めた。ちなみに右折する411号はすぐに修善寺と土肥を結ぶ国道136号に合流する。地図上ではどうみても通り過ぎていたので「見逃したかな。でもそんな馬鹿な」と頭に疑問符を浮かべて走り続け、結局分からずじまいとなったが、後で確認すると県道とは立体交差となっており、この分岐の真下が船原峠だった。ストリートビューで道を追っていくとしっかり峠の標識があった。


船原峠は標高574メートルだが、実際に走ったのは立体交差の上なのでもう少し標高は高いか。ここから同900メートルの小土肥駐車場まで上り、戸田駐車場へ向けていったん下った後、同986メートルのピーク(といっても特に何もないが)を目指し再び上る。船原峠から小土肥駐車場までは5キロで平均こう配は7・4%と結構きつい。強烈な向かい風も吹き続けており、戸田駐車場でストップしようとしたが立っていられないほどだったのでスルーした。


風がやや収まった小土肥駐車場でようやく富士山が見えた。元気の出る瞬間だ。少し雲がかかっていたので「準優勝」か。


標高800メートルの土肥駐車場
標高800メートルの土肥駐車場

標高900メートルの小土肥駐車場
標高900メートルの小土肥駐車場

小土肥駐車場からは富士山が見えた
小土肥駐車場からは富士山が見えた

そして、本日のハイライト。戸田峠(へだとうげ)へ向かっての4キロのダウンヒルだ。空へ向かっていた道が突然、下り始める。そして真正面に富士山が現れる。至福の瞬間だ。


やがて富士山はいったん視界から消えるが、しばらくすると再びその雄姿が現れる。道は正面の駿河湾に飛び込むようにまっすぐ伸びている。まさに絶景。思わず「おーーー!」と叫んでしまった。サイクリストが西伊豆スカイラインに行きたがるわけがようやく分かった。確かにこの道は何度でも走りたくなる「サイコー」の道だ。これで風がなければ「極上」なんだけどね。


実は西伊豆スカイラインは4年前の3月に走るはずだった。三島発着で達磨山から西伊豆スカイラインを走って下賀茂まで行く、AJ西東京主催のブルベ「BRM324しおかつお200キロ」にエントリーしていた。しかし、春分の日の時ならぬ降雪で峠区間は真っ白な雪でおおわれて一部区間が通行止めとなり、2日前に中止が決定。別なコースに振り替えられたため、走ることができなかった(詳細はこちら)。自走だと往復300キロなのでなかなか訪れることはできずにいたが、今回、ようやく念願が果たせた。


絶景のダウンヒルを満喫して戸田峠へ到着。さらに「だるま山高原レストハウス」を通過し、修善寺へと下りは続く。西伊豆スカイラインのピークから修善寺駅までは約17キロ。漕がないでも進んで行く。気持ちいいねぇ。これがあるから自転車はやめられない。


戸田峠
戸田峠

だるま山高原レストハウス
だるま山高原レストハウス

だるま山高原レストハウスから富士山を臨む
だるま山高原レストハウスから富士山を臨む

修善寺駅到着は午後0時19分。湯ケ島の宿からの50キロを4時間半ほどかけて走ってきたことになる。平均時速は十数キロだが、濃密なサイクリングだった。この50キロを走るために昨日160キロを走ってきたのだ。


ランチは修善寺駅の名物駅弁「武士(たけし)のあじ寿司」。4年前に初めて食べて以来のお気に入りで、ここへ来たら外せない。


修善寺駅
修善寺駅

あじ寿司
あじ寿司

さて伊豆をどのルートで脱出するか。修善寺駅からは三島駅まで自転車をそのまま乗せることができるサイクルトレインを伊豆箱根鉄道が実施している(4年前のサイクルトレインなどの詳細はこちら)。これに乗ると三島までは楽ちんだが、その後は国道1号の箱根越えが待っている。もちろん三島から鉄道で輪行するという手もある。輪行袋は持ってきていたが、実は苦手なんだよね。ほかには修善寺から東へ向かい、亀石峠か山伏峠などの峠越えルートがあるが、どこもきつい。


そこで峠越えよりは少しは楽かなと思い、函南から熱海へ抜ける県道11号で鷹ノ巣トンネルを抜けるルートを選択した。神奈川から静岡へ行くブルベでよく使われているルートで、今後のためにも一度走っておきたかった。


修善寺からは国道ではなく伊豆箱根鉄道駿豆線の東を走っている県道を北上した。途中で直進の道がなくなったりもしたが、とにかく線路から外れないよう北へ北へと走り続けた。あまりに快調過ぎて、韮山駅で「大河ドラマ館」に寄ろうと思っていたのだが、気がつけば通り過ぎていた。


鷹ノ巣トンネルへの上りは序盤でこう配10%近い急坂が現れるが、後は5~6%の坂が続いていく。結構上ったかなと思ったところにお蕎麦屋さんやコンビニ、人気店らしいベーカリーが突然現れてびっくり。トンネル手前にきてようやく山越えらしい雰囲気になった。県道11号に入ってから標高約450メートルの鷹ノ巣トンネルまでは約10キロで平均こう配は4・6%。峠越えルートに比べてきつくはないが、楽でもなかった。還暦過ぎたシニアライダーなんでね(^_^;


トンネルを抜けた後は十国峠、箱根峠とさらに上るという選択肢もあるが、もう足はほぼ終わっているのでそんな馬鹿なまねはせず、素直に熱海市街地へと下る。海沿いの国道135号を走り、真鶴駅手前からは車の通行量の少ない旧道へ。根府川の先からは再び国道に復帰し、自宅へと向かった。


鷹ノ巣トンネルを抜け、熱海まで帰ってきた
鷹ノ巣トンネルを抜け、熱海まで帰ってきた

根府川駅
根府川駅

相模川サイクリングロードを走っている時に完全に日は落ちた。ライトを取り付けるシリコンバンドが河津で自転車が強風で倒された拍子に切れたため、予備の小さなライトで暗がりの中を走り、自宅には午後7時過ぎに無事到着した。この日は走行距離は155・8キロで獲得標高は2245メートルだった。2日間で走った距離は321・3キロ。念願の西伊豆スカイラインも走れ、「いや~、楽しかったな~♪」と自宅玄関前でサドルを持って自転車を持ち上げたら、シートポストにサドルを付けている台座がもげた。


もげたシートポストのヤグラ部分
もげたシートポストのヤグラ部分

これまでも1年半から2年でだいたい折れていた。そういえばそろそろ2年が経過するので折れたこと自体はショックではないが、これが伊豆の山の中だったらと思うとぞっとした。100キロも立ち漕ぎでは走れないもんねぇ。ツイていないようで、ツイていたのかな。【石井政己】