瀬戸内サイクリングにはしまなみ海道だけではなく、ほかにも海峡を橋で渡り離島を巡るコースがある。そこで、尾道にもう1日滞在し、しまなみ海道を往復(詳細はこちら)した翌日の6月29日、今年全線が開通したゆめしま海道を走ってみた。


25の離島(有人島7、無人島18)が集まってできた、瀬戸内海に浮かぶ町が愛媛・上島町(かみじまちょう)。そのうちの弓削島、生名島、佐島、岩城島を結んでいるのがゆめしま海道だ。96年に弓削島と佐島間に弓削大橋、11年に佐島と生名島間に生名橋が完成。今年3月に生名島と岩城島をつなぐ岩城橋が架けられ、この4島がようやくつながった。


しまなみ海道からはフェリーで渡る。主なアクセスは生口島から岩城島、因島から生名島あるいは弓削島というルートがある。今回は家老渡フェリーで因島の南端に近い家老渡港から弓削島の上弓削港へ向かった。


今回走ったゆめしま海道のコース
今回走ったゆめしま海道のコース

地元食材をふんだんに使ったお品書き付きのホテルの朝食をがっつりと食べ、午前8時過ぎにのんびりと出発。天気は最高だが、この日も暑くなりそうだ。


まずは前日とはややコースを変えて向島、因島を走り、約30キロ先の家老渡港には午前10時5分に到着。10時発のフェリーに惜しくも間に合わず、時刻表と自販機しかない乗り場で25分待って乗り込む。約10分で上弓削港から弓削島に上陸。信号が1つもなくトンネルも0、舗装も綺麗で交通量も圧倒的に少ないと上島町が胸を張るストレスフリーのサイクリングの始まりだ。


因島の南端付近にある家老渡フェリー乗り場
因島の南端付近にある家老渡フェリー乗り場
時刻表が貼ってあるだけの因島の家老渡フェリー乗り場
時刻表が貼ってあるだけの因島の家老渡フェリー乗り場
因島からフェリーに乗って弓削島へ向かう
因島からフェリーに乗って弓削島へ向かう
フェリーからは遙かに生名橋が望める
フェリーからは遙かに生名橋が望める
約10分で上弓削港到着
約10分で上弓削港到着

港からは海沿いを南下する。埋め立て地が少ないため海が近く気持ちがいい。しばらくすると右手に佐島を挟んで生名橋と弓削大橋が同時に見えてきた。


遙かに生名橋を望む
遙かに生名橋を望む

4キロ弱進むと弓削大橋。この橋へはしまなみ海道とは違って自転車用のアプローチはなく、そのまま一般道でぐるりと回り込んで向かう。左手に自転車・歩行者道があるが、ガードレールで仕切られてはおらず普段走っているのと変わらない普通の橋だった。違うのは前半上って後半下るところか。


弓削大橋
弓削大橋
弓削大橋へ向かって上る
弓削大橋へ向かって上る
弓削大橋
弓削大橋

橋を過ぎて下っている途中で休憩所とゆめしま海道の石碑を発見したのでストップ。真っ青な空と穏やかな瀬戸内のマリンブルー。その真ん中に因島が浮かぶという気持ちのいい風景が広がっていた。


弓削大橋の佐島側にあるゆめしま海道の石碑
弓削大橋の佐島側にあるゆめしま海道の石碑

弓削大橋から生名橋まではそのまま進めば1キロほどであっという間。この橋も左手に自転車・歩行者道があり、前半上って後半下る。橋からの絶景を(高所恐怖症なので)怖々となりながら楽しんだ後、気持ちよーく下って(という事は帰りは上るのか…)いると、トイレと石碑をここでも発見した。トイレに関してはあちこちで見かけ、それも綺麗でバイクラックもありサイクリストにとってはありがたい。


生名橋
生名橋
生名橋
生名橋
生名橋を望む。道は海に近い
生名橋を望む。道は海に近い

生名橋からは佐島の海岸線を北上。今回のルートで唯一見かけたコンビニ(中国地方ではお馴染みの「ポプラ」)の前を左折して佐島を横断して岩城橋へ向かうが、曲がった途端に上り坂。それも8%近い。しまなみ海道は上っても3%前後でほぼ平坦なコースだったが、こちらは橋も含めこの後も意外なところを上らされることになる。


きつい坂を上り、いったん下って再び上っていると新しくできた岩城橋が現れた。生名橋からは3キロぐらいか。自転車道はなく白線が引かれた路肩があるだけの普通の橋だが、その傾斜が半端ではない。前の2つの橋にさらに拍車をかけ、道は空へ向かって一直線に延びている。「あれを上るのか」と思うと少し凹む。


上りの勾配は5%前後。200メートルほどでピークとなり一気に下り始める。こちらの勾配も5%前後だった。上っているときはゆっくりなので周囲が見渡せ気持ちいい。しかし、真下の海をちらりと見ると相変わらずのゾクゾク感に襲われる。高所恐怖症の身にとって徐々に標高を上げる橋はつらいねぇ。


令和4年3月完成の岩城橋
令和4年3月完成の岩城橋
岩城橋の勾配5%の上り
岩城橋の勾配5%の上り
遠目から岩城橋を見ると傾斜がよく分かる
遠目から岩城橋を見ると傾斜がよく分かる
空へと続く岩城橋
空へと続く岩城橋
まるで山のような岩城橋
まるで山のような岩城橋

海抜0メートルまで爽快に下り切り、真下から見上げた岩城橋は真ん中がぐっと持ち上がり、まるで山のようだった。その雄姿にしばし見とれながら、帰りはあそこまで上るのかとため息をつく。


この橋をくぐった先に地図上ではゆめしま海道開通記念モニュメントがある。しかし、この日は工事で通行止めとなっていたので行けず(逆から回れば行けたかも)。後日調べると、弓削島ひだまり公園(弓削港近く)と生名島の岩城橋付近にあるいきなスポレク公園前にもあり、これらのモニュメントも岩城橋と同じ22年3月に完成したようだ。ところで「いきなスポレク公園」は「粋なスポレク公園」かと思い洒落た名前をつけたもんだと感心したが、単純に生名をひらがなにしただけだった(^_^;


ゆめしま海道とは岩城島の岩城橋付近を起点とし生名島、佐島を経て弓削島の弓削大橋付近へと至る県道338号岩城弓削線の愛称で、距離は6・1キロしかない。だが、しまなみ海道と同様、外周コースなども道しるべとなるブルーラインが引かれている。上弓削港から岩城橋往復の約12キロでは物足りないので、帰りに生名橋を渡った後、佐島の海岸線を南下して「Uターンブルーライン」という珍スポットへ行ってみた。


海岸線をブルーラインに沿って走ると、すぐに佐島港。この付近でブルーラインは途切れ、路地に迷い込んでしまうが、海が垣間見えたので無事に海岸線へ復帰。再び現れたブルーラインにひと安心。だが、標識に直進は「行き止まり」とある。少しの不安感を抱えながら進んで行く。


佐島の海岸線をブルーラインに沿って進む。標識は「行き止まり」とある
佐島の海岸線をブルーラインに沿って進む。標識は「行き止まり」とある

道幅は急に狭くなり、アップダウンが続く山道となった。結構きつい。本当にこの先に「Uターンブルーライン」があるのかと不安になりかけた頃、サイクリストとすれ違った。苦しそうな表情ながら挨拶を返してくれたところを見ると、どうやら正しいようだ。


途中で垣間見えたビーチ
途中で垣間見えたビーチ

やがて視界が開け、ブルーラインがUターンしている場所へたどり着いた。道しるべによるとこの佐島最南端の地は沖浦で、弓削港までは7・7キロ地点。そして右手を見ると、隠れ家のようなビーチと瀬戸の美しい海原が静かに広がっていた。人は誰もおらず、絶景をひとり占め♪ 日陰があればもっとゆっくりしたかった。


ブルーラインがUターン。つまり行き止まり
ブルーラインがUターン。つまり行き止まり
最果ての地には絶景のビーチが
最果ての地には絶景のビーチが
ブルーラインUターン地点に広がるビーチ
ブルーラインUターン地点に広がるビーチ

Uターンという言葉通り、ここで行き止まりなので折り返して弓削島へ向かい、名残を惜しみつつ午後1時10分のフェリーでゆめしま海道に別れを告げた。今回は時間の関係で30キロほどしか走れなかった。次回はぜひ弓削島の外周コースや岩城島・積善山へのヒルクライム、そしてグルメなども楽しみたい。ノスタルジックな風景にも出会いたい。それにしても信号ゼロはサイコーだった!【石井政己】