30日間で3700キロをE-Bike(YAMAHA WABASH-RT)で走り切り、佐多岬~宗谷岬の日本縦断を果たした、旅行家藤原かんいち。前例のないE-Bikeによるチャレンジ。運動不足の61歳の中年男にできるのか!? 一体どんな旅だったのか!? 激動の30日間を旅日記で振り返ります。


HOKKAIDERこと小原くんと久しぶりの再会。同じバイク旅人で20年来の親友
HOKKAIDERこと小原くんと久しぶりの再会。同じバイク旅人で20年来の親友

 ■Day29 2022/06/13

朝、7時半。曇り空の下を走り出す。今日も含めて残り2日。僅か2日間で350kmも走れるか。「いやいや、何としても走ってやる!」やる気満々でペダルをこぐ。今日、最初に目指すのはステージ16『美瑛ジェットコースターの路』。なだらかな丘が連なる美瑛にある直線道路で、急傾斜のアップダウンが連続する様がジェットコースターに似ていることから、こう呼ばれている。

美瑛へ向かって国道237号を北上。町を出ると広大な畑の景色が続く。上富良野を過ぎ、深山峠の少し先で国道を離れると、田園地帯の町道へ入って行った。車のほとんど通らない田舎道をしばらく進むと『ジェットコースターの路』と呼ばれる町道西11線にぶつかった。

アップダウンの激しい道なので普通の自転車なら避けるところだが、E-BIKEなら心配無用。電動アシストを使ってグイグイ登り、下り坂はノーペダルで気持ちよく下ってゆく。景色も良く、道も最高。心行くまでジェットコースター気分を味わった。


富良野では『ホステル・トマール』に宿泊。自転車を室内で保管してくれるのが嬉しい
富良野では『ホステル・トマール』に宿泊。自転車を室内で保管してくれるのが嬉しい
富良野駅にて。鉄道駅はその町の個性が見えるので立ち寄ることが多い
富良野駅にて。鉄道駅はその町の個性が見えるので立ち寄ることが多い
富良野と言えばラベンダー。ファーム以外のところでも見ることができる
富良野と言えばラベンダー。ファーム以外のところでも見ることができる
メロンのハーフカットの真ん中に聳え立つソフトクリームはインパクト大
メロンのハーフカットの真ん中に聳え立つソフトクリームはインパクト大
『美瑛ジェットコースターの路』は激しいアップダウンを繰り返す直線道路
『美瑛ジェットコースターの路』は激しいアップダウンを繰り返す直線道路

次に訪ねるのは、旭川に住む友人の小原くんが、北海道を旅するライダーたちの情報交換の場としてオープンさせたギャラリーカフェ『HOKKAIDER BASE ホッカイダーベース』。昨年プレオープン、今年7月の本オープンに向けて、改装工事の作業をしていると聞き、会いに行くことにした。

訪ねるのは初めてだが、国道237号沿いということですぐに見つかった。小原くんと久しぶりの再会、お互い白髪が増えたが元気そう。ガハハハといつもの明るい笑顔で出迎えてくれた。「30日で日本縦断なんてすごいですねー!」「オートバイもいいけどE-BIKE面白いよ~、アシストがあるから小原くんでもできるよ」「いやいや、ムリムリ…ガハハハハ…」。

現在改装中の店内を見学、さらに最近販売を始めたというインスタントラーメン『ライダー麺』を作って食べさせてくれたが、これが想像以上にうまかった。今回は30日間目標で宗谷岬へ向かっているためあまり時間がない。ゴールした後にまた来ることを約束。「気を付けて、頑張って!」明るい声に見送られ、走り出した。


旭川市西神楽にある『HOKKAIDER BASE』は北海道旅人の強い味方。2022年7月に本オープンした
旭川市西神楽にある『HOKKAIDER BASE』は北海道旅人の強い味方。2022年7月に本オープンした
いま、旭川で話題のインスタント麺(笑)!『ライダー麺』をご馳走になった
いま、旭川で話題のインスタント麺(笑)!『ライダー麺』をご馳走になった

旭川市内から国道40号で北へ向かう。明日、宗谷岬に着くためには、今日中に美深町かその先の音威子府村まで進んでおきたい。移動しながら相棒カメラマンの平塚くんとふたりで宿をネットで検索、さらに直接電話で宿を探しまくるが見つからない。この辺りは宿の数が少ない上、休業中だったり、満室だったりで、泊まれる宿がなかなか見つからない。時間ばかりがどんどん過ぎてゆく。

そんな中、ようやく見つかったのが美深町よりさらに手前にある名寄市の観光ホテル。計画より50km以上手前にある町だ。しかし、宿に泊まらなければ、E-BIKEのバッテリー充電ができない。泊まれなくなったら困るので、すぐに予約を入れる。これで30日間達成はかなり難しくなってしまったが、とにかくいまは走ることに集中する。

緑の林が延々に広がる、単調な景色が続く。定番のコンビニ『セイコーマート』を見つけるとペダルを止めて休憩。ジュースやコーヒーを飲んだり、パンを食べたり。栄養補給と小休憩を繰り返しながら進んでゆく。

士別を過ぎると畑が増え、視界が広くなった。さらに昼すぎまでは雲が多かったが、夕方になると雲はなくなり、気持ちのいい青空に変わった。太陽が地平線に沈むと空はオレンジ色へ、そして空は星で埋め尽くされてゆく。北海道の空は美しくドラマチックだ。


炭酸ジュース好きな僕は北海道に来ると毎日のように『ガラナ』を飲んでいる
炭酸ジュース好きな僕は北海道に来ると毎日のように『ガラナ』を飲んでいる
平地が多い北海道では自然と走行距離が延びる
平地が多い北海道では自然と走行距離が延びる
光る月を眺めながらE-BIKEを走らせる
光る月を眺めながらE-BIKEを走らせる

名寄のホテルに着いた時にはすでに夜8時を回っていた。シャワーを浴び、さびれたラーメン店で旭川ラーメンを食べ空腹を満たした。カウンターだけの小さな店で客は僕だけ、これでやっていけるのかな?と余計な心配をする。

部屋へ戻るとグーグルマップに走るコースを入れて、詳しく調べた。すると宗谷岬まで230km近くあることがわかった。いままで1日の最長距離は170km。200km以上走ったことはない。かなりの距離だけど…走れるか? 日本縦断を始める前だったら、ムリだと諦めていただろう。しかし今はこれまでの経験と、確かな体力がある。頑張れば行けるかもしれない。そんな気がした。

1時間15km進めれば、15時間で走れる計算になる。ゴールした後は思い切り休めるんだし…そう考えると、できるかもしれない、いや行ける。勝手にどんどん希望の力が湧いてくる。よしっ、とにかく明日は早起きだ。興奮しながらベッドに潜りこんだ。


■日付:2022年06月13日

■走行距離:146.3km

■ここまでの総走行距離:3,461km

■ルート