川のせせらぎがとても心地よいエリアでは、水の音に癒されながらくつろげます。その奥にはLAの砂漠をデザインしたエリアも。
川のせせらぎがとても心地よいエリアでは、水の音に癒されながらくつろげます。その奥にはLAの砂漠をデザインしたエリアも。

 彫刻、絵画、造園、インテリアデザインなど幅広い分野で活躍したイサム・ノグチという日系アメリカ人の芸術家をご存知ですか?英文学者で文筆家の野口米次郎さんと米国人の作家レオニー・グルモアさんとの間に1904年に生まれたノグチは、ここロサンゼルス(LA)生まれの日系2世です。3歳から14歳まで日本で過ごした後、彫刻家を目指して単身渡米し、彫刻や造園のみならず商業デザインや舞台美術などの分野でも芸術的才能を開花させたことで知られています。

LAでは昔からライマメという豆が栽培されていたことから造られた「スピリチャル・オブ・ザ・リマ・ビーン」という作品は、岩を豆に見立てて積み上げたデザインが特徴。
LAでは昔からライマメという豆が栽培されていたことから造られた「スピリチャル・オブ・ザ・リマ・ビーン」という作品は、岩を豆に見立てて積み上げたデザインが特徴。

 香川県高松市にあるイサム・ノグチ庭園美術館や公園全体を一つの彫刻に見立てた作品として造られた札幌市のモエレ沼公園など日本にも多くの作品が残されており、70年に大阪で行われた万博博物館の噴水など日本人にもなじみがある芸術家です。生前拠点にしていたニューヨークにもノグチ美術館(正式にはイサム・ノグチ財団・庭園美術館)がありますが、ここLAにもイサム・ノグチの作品を無料で楽しめる庭園があります。

ビルに囲まれた小さなオアシスのような庭園は、地元でもあまり知られていない隠れた名所
ビルに囲まれた小さなオアシスのような庭園は、地元でもあまり知られていない隠れた名所

 「カリフォルニア・シナリオ」と名付けられた庭園は、ロサンゼルス空港から車で南に30分ほど南下したコスタメサという町のオフィスビル群の中にひっそりとたたずんでいます。オフィスビルに囲まれた中庭にあるこの庭園は、1984年に作られたもので、カリフォルニアの自然を表現しています。水の音に癒される川を表現したエリアやサボテンを使ったカリフォルニアの砂漠地帯を彷彿させるデザートランド、木々に囲まれた北カリフォルニアのヨセミテ公園などを思わせるエリアなど、森や川、砂漠などカリフォルニアらしい自然がバランスよく配置されており、シンプルながら心地よい空間が広がっています。

シンプルながら計算された美しいデザインは、都会の中のオアシスとして周辺ビルで働く人たちを癒しています。
シンプルながら計算された美しいデザインは、都会の中のオアシスとして周辺ビルで働く人たちを癒しています。

 この庭園の面白いところは、オフィスビルに囲まれているので、そこに足を運ぶまでどのような空間が広がっているのか外からは全く分からないということ。なぜ、こんなビル群の真ん中に?思うほど、唐突に美しい景観が目に入ってくるのが特徴で、まさに都会の中のオアシスという雰囲気です。そのため、通称「ノグチ・ガーデン」の名で知られるこの庭園はLAでも知っている人は少なく、知る人ぞ知る隠れ家的存在。決して広くはありませんが、とても心地よい気が流れており、ベンチに座ってコーヒーを飲みながら読書をしたり、芝生に寝転んでくつろぐサラリーマンや写真撮影する芸術家の姿も見られます。すぐ近くにLA最大級の大きさを誇るショッピングモール「サウスコースト・プラザ」もあるので、ショッピングのついでに立ち寄るにもおすすめのスポットです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)

無料で一般開放されているので、LAに行かれる方はぜひチェックしてみて下さい
無料で一般開放されているので、LAに行かれる方はぜひチェックしてみて下さい