来月はいよいよアカデミー賞授賞式ということで、ハリウッドにある歴史的な映画館を紹介します。ハリウッドの映画館といえば、スターの足型・手形で知られるチャイニーズ・シアターが有名ですが、その斜め向かいにエル・キャピタン・シアターというディズニー専用の映画館があります。日本ではあまり知られていない映画館ですが、チャイニーズ・シアターよりも1年早い1926年にオープンした歴史ある劇場です。この映画館の特徴は、美しいデコレーションが施された内装とディズニーらしい手の込んだ演出。他の映画館では絶対に味わえない映画鑑賞が楽しめます。

人気の作品は前売りで売り切れになることも。ハリウッドのど真ん中という立地にありながら、あまり知られていない穴場です
人気の作品は前売りで売り切れになることも。ハリウッドのど真ん中という立地にありながら、あまり知られていない穴場です

 オープン当時はブロードウェイの舞台を上演する劇場でしたが、1941年に映画館として再オープン。こけら落としとして「市民ケーン」(1941年)のプレミア上映会が行われて以降、数々の名作が上映されてきましたが、1991年にディズニーが買収して2年に及ぶ大規模な改修工事を経てディズニーの専用劇場となりました。「ロケッティア」のプレミア上映会で華々しいデビューを飾って以降は、新作、リバイバル問わずにディズニーの映画のみが上映されています。12月にはクリスマス映画の上映を行うなど季節に合わせた特別上映も行っており、思いがけず懐かしい過去の名作に出会えることもあります。もちろん、ディズニー傘下のマーベルの作品の公開もあり、16日からは国王とヒーローという2つの顔を持つ謎めいた新ヒーロー、ブラックパンサーの活躍を描くマーベル新作「ブラックパンサー」が公開されます。

派手な電光掲示板が目印。ディズニーファンのみならず、映画ファンなら一度は訪れる価値があります
派手な電光掲示板が目印。ディズニーファンのみならず、映画ファンなら一度は訪れる価値があります

 劇場入口の上の派手な電光掲示板や昔ながらのチケット売り場、入口周辺の外観にも歴史を感じる美しい装飾が施されていますが、一歩中に入るとロビーから劇場内の天井の装飾まで、その美しさに圧倒されます。もともと劇場として建てられていただけに、2階席にバルコーまであり、最新のシネコンとは違う昔の劇場ならではの雰囲気が楽しめるのも特徴です。2階ロビーには、映画館の歴史や過去のプレミアの写真、ウォルト・ディズニーやミッキーの写真なども展示されており、こちらも見ごたえがあります。

1926年に建てられた歴史あるハリウッドの劇場の歴史などが、ロビーに展示されています
1926年に建てられた歴史あるハリウッドの劇場の歴史などが、ロビーに展示されています

 この劇場の人気の秘訣のひとつが、映画上映前に行われるショー。上映作品ごとに内容に沿った短いショーが行われ、これを観るために訪れる人もたくさんいます。例えば、「アナと雪の女王」(13年)の上映では、ダンサーがステージに登場して劇中歌を歌って踊るミュージカルの上演があり、別料金を払っても良いくらいレベルの高いショーが楽しめます。会場にいる子供たちを舞台に上げる演出などもあるので、特に家族連れに人気があります。他にも1920年代に作られた美しいパイプオルガンによるディズニーの名曲の生演奏もあり、ディズニーらしい演出が満載です。オルガンが舞台の下からせり出す仕組みになっており、これを楽しむだけでもこの劇場に足を運ぶ価値があります。

映画の上映前には、オルガンの生演奏やミュージカルなどのショーが楽しめます
映画の上映前には、オルガンの生演奏やミュージカルなどのショーが楽しめます

 場所柄、映画のプレミアも数多く行われており、映画館前にレッドカーペットを敷いてスターたちが歩く姿も見ることができます。ディズニーのイベントが行われる際は劇場が貸し切りになることもあるので、ここで映画鑑賞をしたい方は事前にウエブでスケジュールを確認してから出かけることをおすすめします。お土産にもなるキャラクターなどの絵が入った容器入りポップコートとソーダ、ポスターなどグッズがセットになったVIPチケットもあるので、映画ファンなら一度は訪れてみると良いですよ。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。日刊スポーツ・コム「ラララ西海岸」)